【業界トピックス】ソフトバンクが法人事業戦略を発表、DX部隊で「利益倍増」目指す

ソフトバンクが法人事業戦略を発表、DX部隊で「利益倍増」目指す

 ソフトバンクは7月2日、都内で法人事業に関する戦略説明会を開催した。AIやIoT、5Gなどのテクノロジーを活用して事業を拡大し、2018年度で763億円あった法人事業の営業利益を数年で倍増させる方針だ。
 
 同社の代表取締役社長執行役員 兼 CEOである宮内謙氏は、ソフトバンクの事業成長の柱は通信事業のほか、連結子会社化したヤフー、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資企業などと合弁で展開する新事業領域の3つであるとしながらも、AI・IoT・5G・データのキーテクノロジーにより、大きなチャンスが生まれることで、法人事業に大きな可能性があると説明した。
 さらに、キーテクノロジーは既存の産業で新たなビジネスを創出し、「あらゆる産業が再定義される」という。そして、産業の再定義が、労働力人口の低下やインフラの老朽化などの「社会課題の解決にもつながる」と宮内氏は説明。社会課題の解決を企業と一緒に推進することで「数年で営業利益を倍増、それ以上にできる」と自信を見せた。
 
 続いて、同社代表取締役副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏は、ソフトバンクの法人事業の概況と今後の戦略について説明。ソフトバンクは、2004年に日本テレコムを買収した当時は、法人事業の営業利益は500億円超の赤字であったが、2018年には763億円にまで成長した。この要因について、今井氏は、「法人事業のミッションは製品販売ではなく、企業の課題を解決すること」だとして、顧客目線で課題解決にあたったことで、営業利益を上げることが出来たと説明した。
 そして、企業課題の解決は、ソフトバンク1社では成し得ることは出来ず、業界のキープレーヤーであるパートナー企業との「共創」が必要だとして、パートナー企業が持つノウハウと、ソフトバンクが持つアセットを生かすことで、エンドユーザーに価値を与える共創プロジェクトを展開していきたいと語った。
 さらに今井氏は、その仕組みを運営する専門部隊として「デジタルトランスフォーメーション(DX)本部」を2年前に設立したことを発表した。DX本部は、営業部隊約3000人の中から優秀な120人を結集し、モバイルの販売などは行わず新事業に専念する部隊であるとして、この組織からソフトバンクの次の柱となる事業を創出したい考えだ。
 
 DX本部の本部長である河西慎太郎氏からは、DX本部の取り組みについて説明。組織設立から2年間で、450の新規事業アイデアを考え、その中から現在35の案件を進めているという。
 そして、そのうちの17の案件は、2020年度までに収益化できる予定であり、中でも物流改革への取り組み第一弾として力を入れているのが、イオン九州と実施しているネットスーパーの夜間配送を実現するための実証実験とのこと。
 物流、特に顧客に商品を受け渡すまでのラストワンマイルの配送は、EC利用の伸びと世帯構成の変化(単身世帯や共働き世帯の増加)、さらにはドライバー不足により、日中に受け取ることができず再配達となる荷物が増加しているのが現状だという。
 それに加えて、運送会社の配送キャパシティは固定化されており、荷物の増加や減少に柔軟に対応できず、機会損失と余剰コストの発生につながりやすいという。そこでソフトバンクとイオン九州は、2019年6月から、AIやIoTといった最先端テクノロジーを活用することでラストワンマイルの部分を最適化し、配送拠点からの配送業務をマッチングする取り組みを実施しているという。
 両社は、配送面での問題で時間帯延長などサービス拡大がしづらく、利用が進まないネットスーパーの課題を解決するため、CBcloud社の配送業マッチングサービス「PickGo」を活用し、ドライバーを必要な時、必要な数だけ確保することで配送コストを削減しながら、配送時間を20時から23時まで伸ばす実証実験を実施しているとのこと。
 
 実証実験の成果は「今はまだ成功といえるKPIを達成できていない」(河西氏)としながらも、この実証実験の結果を成功モデルとして全国のイオングループへの横展開を進めていきたい考えだ。
 河西氏は、「今後も新たな取り組みを発表していきたい」と語り、将来的にはバイクや自転車のマッチング、さらにはドローンや自動運転などを活用した配送の仕組み作りにも取り組んでいきたいとしている。
 

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