ソフトバンク宮内社長、成長戦略と構造改革でWatson活用「業務の人員半分に」
ソフトバンクと日本IBMは10月27日、都内で「AI Business Forum TOKYO」を開催し、人工知能「Watson」の価値と先進事例について紹介した。
基調講演に登壇した日本IBM 代表取締役社長執行役員 エリー・キーナン氏は、「世界を変えるテクノロジーが台頭している」として、6つの技術を紹介。AI、IoT、ブロックチェーン、量子コンピューター、ニューロモーフィックコンピューター、世界最小のコンピューターの6つを挙げ、コンピューターを使うことがすでに人間の生活の一部となっており、多くのテクノロジーが生活をサポートしていると語った。
一方で、同氏は、膨大な情報から意思決定するにはAIが重要だとして、「生活をサポートするAIと、ビジネスで活用されるAIは異なる」と語り、ビジネスの世界にこそAIのチャンスがあり、本当の力が発揮されると述べた。
続けて、Watosonの価値に言及。AIをビジネスで活用するためには、業界用語や文脈、プロセスやワークフローをAIが理解できないと難しいとしながら、「Watsonはすでに医療現場で医者の診断を支援するサービスを開始しており、ビジネスの世界で実績がある。他のAI技術ではそういう実績はまだない」と、Watsonの価値を強調した。
また、「現在、世界に存在するデータのうち、20%は検索可能だが、残りの80%は外部からアクセスできない企業独自のデータ」として、Watsonではこうした“競争優位につながる”データを活用し、収益化するためのサポートができると訴えた。
続いて、2015年2月に日本IBMと提携し、Watsonの国内展開で協業を行ってきたソフトバンクから、同社代表取締役社長 兼 CEOの宮内謙氏が登壇。「今から10年前には、スマートフォンがこれほど普及するとは考えられていなかった」としながら、「これからの10年間はもっと大きな変化が起きる」と述べ、AI活用による同社の成長戦略と構造改革について紹介した。
同氏は、幹部や社員に常に伝えている2つのキーワードがあるとして、「成長戦略」と「構造改革」を挙げた。従来は、テクノロジーにおける企業の変化は構造改革寄りで、生産性向上や自動化といったイメージが強かったが、これからの時代において、テクノロジーは成長戦略を描くためにも重要になるとして、「テクノロジーで事業が再定義される時代が来る」と提唱した。
また、成長戦略を描くうえで重要な3つの経済変化として、IoTや自動運転などに代表される「コネクテッドエコノミー」、自転車のライドシェアに代表される「シェアリングエコノミー」、個人の評価を集積して貸し付けなどのサービス提供条件に反映させる「スコアリングエコノミー」を挙げた。そして、同社では今後、通信をコア事業に据えながら、これら3つの経済変化において、様々な産業と提携する可能性があるとして、「成長戦略として大きなチャンスを感じている」と述べた。
こうした可能性の中、同社ではAIを活用した革新的企業との協業などを開始しており、日本でもジョイントベンチャーを展開していく方針を示した。
一方で、構造改革として、あらゆる業務オペレーションを自動化するために、Watsonを活用した業務改善を推進。現在、社内では40のAIプロジェクトが進行中だという。
そのひとつの事例として、「見積書作成の自動化」を紹介。送られてきたメールをWatsonが読み取って自動で見積書を作成するシステムを構築することで、見積書の作成に費やす時間が年間4万6200時間から150時間に短縮されたという。
同社では、Watsonの活用により定型的なオペレーション業務の効率化をさらに推進し、3~4年後には半分の人員で稼働できるようにさせ、残りの人員を新しい事業に回すことで成長を進めていくとしている。