国内2社目の純利益1兆円超え、孫社長「1兆円は通過点」 ―ソフトバンク2017年3月期決算
ソフトバンクグループ株式会社は2017年5月10日、2017年3月期決算を発表した。売上高は8兆9010億400万円、営業利益は1兆259億9900万円、純利益は1兆4744億3000万円であった。
売上高は、前期比 192億2700万円(0.2%)増の 8兆9010億400万円となった。国内通信事業とヤフー事業が増収となったほか、アーム事業も新たに加わったが、スプリント事業と流通事業は減収となった。スプリント事業は米ドルベースでは増収だが、円高の影響により減収となった。
また、営業利益は、前期比 1170億9200万円(12.9%)増の 1兆259億9900万円となった。国内通信事業で 311億8300万円、スプリント事業で 1249億3800万円、それぞれのセグメント利益が増加したほか、新設のアーム事業で 129億1900万円のセグメント利益を計上した。
一方、ヤフー事業のセグメント利益は329億6800万円の減少となった。前期に、アスクルの企業結合に伴う再測定による利益594億4100万円が含まれていたことが影響した。
その結果、純利益は、前期比 9161億8900万円(164.1%)増の 1兆4744億3000万円となった。最終益が1兆円を超えるのは、同社としては初めてであり、国内の事業会社ではトヨタ自動車に次ぐ2社目である。トヨタ自動車は、最終益が1兆円を超すのに67年を要したが、ソフトバンクはそれより短い36年での達成となった。
国内通信事業の売上高は、前期比 491億4100万円(1.6%)増の 3兆1937億9100万円となり、そのうち、通信サービス売上は前期比 180億5800万円(0.8%)増の 2兆4231億500万円、物販等売上は前期比 310億800万円(4.2%)増の 7706億8600万円となった。
通信サービス売上は、光回線サービス「SoftBank 光」の契約数の増加に伴い、ブロードバンドサービスの売上が前期比 919億4500万円(51.9%)増加したことにより増加した。移動通信サービスの売上は、「おうち割 光セット」の累計適用件数の増加に伴う割引総額の増加(通信売上の減少)に加えて、モバイルデータ通信端末とPHS 契約数の減少などにより、前期比 667億2300万円(3.4%)減の 1兆8866億4000万円となった。
物販等売上は、主にブロードバンドサービス用宅内機器と「Y!mobile」スマートフォンの売上が増加したことによって増加した。
セグメント利益は、売上高の増加に対して、売上原価と販売費及び一般管理費の営業費用が前期比 179億5800万円(0.7%)の増加にとどまったことにより、前期比 311億8300万円(4.5%)増の 7195億7200万円となった。
スプリントは、売上高の拡大を図るとともに大規模なコスト削減を進め、成長軌道への復帰を目指している。売上高については、最大の収益源であるポストペイド携帯電話の契約数の拡大を図っており、当期、当該契約数は2期連続の純増となった。
米ドルベースの売上高は、端末売上の増加が通信売上の減少を上回り、前期比 11億6700万米ドル(3.6%)増の333億4700万米ドルとなった。通信売上は、ポストペイド契約数が増加したものの、低料金プランの普及やプリペイド契約数の減少により、前期を下回った。端末売上は、携帯端末のリース料収入と割賦販売台数がいずれも増加したため、前期を上回った。
セグメント利益は、売上高の増加に対して、営業費用が前期比 3億8200万米ドル(1.2%)の増加にとどまったことに加え、その他の営業損益が前期比 4億3700万米ドル改善したことにより、前期比 12億2200万米ドル(241.5%)増の 17億2800万米ドルとなった。
また、調整後 EBITDA は、前期比 17億5900万米ドル(21.5%)増の 99億3100万米ドルとなり、調整後フリー・キャッシュ・フローは、6億700万米ドル(スプリント開示値)のプラスに転じた。
2016年9月5日のアームの買収完了に伴い、新たな報告セグメントとして「アーム事業」が設けられた。アームは主に、低消費電力型マイクロプロセッサーと関連テクノロジーのデザインなど、半導体の IP(回路の設計情報などの知的財産)のライセンス事業を行っている。また、同社のテクノロジーを用いた半導体チップを含んだ製品のコスト効率性や信頼性を高めるためのソフトウエアツールの販売のほか、サポート、メンテナンス、トレーニングなどのサービス提供、IoTをはじめとする周辺市場において収入源を確立するための先行投資を行っている。
同事業の売上高は、アームのテクノロジーのライセンス収入、ライセンシーによるアームのテクノロジーを用いた製品の出荷に応じて得られるロイヤルティー収入、ソフトウエアツールの販売などに伴う収入から構成されているが、売上高は 1129億200万円、セグメント利益は 129億1900万円、調整後 EBITDA は 530億5400万円となった。
同社代表の孫氏は、今期、営業利益、純利益ともに初の1兆円超えを達成したのは株式の売却益が純利益を押し上げたことが理由であるとした。10年前の真っ赤な赤字時代に株主から、「ソフトバンクは今後どうなるんだ」と聞かれた時に、「大風呂敷、大ボラだということを前置きして『いずれは、利益で1兆円を達成する会社になりますよ』と答えた」というエピソード通り今期この “大ボラ”が実現した。しかし、孫氏は「達成したが感動はない。1兆2兆の利益はまったくの通過点だ」と語った。
2013年に米国のキャリアで、当時シェア3位のSprintを買収し、当初は4位のT-mobileと合併することで、米通信業界の再編を狙っていたが、米国の規制当局がこの合併に反対し頓挫していた。しかし、その後Sprint単独で経営を改善する方針に転換し、2016年度決算では、売上高は円ベースで赤字だったものの、ドルベースでは増収となった。 孫氏いわく「Sprintはもはや重荷ではなくソフトバンクの成長エンジンとなる」と語り、営業利益は前年度の6倍の18億ドルとなったという。
2014年度上期決算で、孫氏は「私は、金の卵を生むガチョウに価値があると思う。金の卵を生むガチョウになりたい」と語っており、今回再び「金の卵を産むガチョウ」の例え話を持ち出して説明した。
今回は、2015年3月期との比較で、2兆円の負債を増やした一方で、7兆円得た成果を、「ガチョウが2兆円分多く餌を食べた結果、借金ができてしまったが、それ以上の金の卵を産んだ。
インターネット業界が始まって以来、GoogleやAmazonのように続々とヒーローが生まれ、企業価値を上げる会社が増えてきた。その上で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドでは、 “餌”(借金)を増やさずに【真のゴールドラッシュ】に挑み、今後も大きな勝負をしていく」と語った。
質疑応答では、「米国の通信業界の再編ということで、現状考えているのは従来の戦略なのか新たに戦略をたてるのか」という質問に対し、「当然一番の本命は当初から構想を持っていたT-mobileだ。T-mobileとは真摯に心を開いて交渉に入っていく」と話した。
また中長期的な将来像を問われ、「それぞれの事業会社をそれぞれの事業会社のCEOに経営を委ねて、グループで戦略的シナジーを出し合うような事業集団を構成し束ねていく。今回のビジョンファンドでは、すでに30社近く一気に投資をするという話し合いを進めている。従来の財閥経営では自分の会社のブランドをつけ、新卒から雇った社員で、内部でつくったものを最優先され、1位集団が構築できない。No.1のもの、集団を構築するために今までは資金面で制限があったがこれからは制限が無くなったので、すでにNo.1の会社を仲間にしていく。ソフトバンクの成長は一気に加速する」と述べた。
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