【業界トピックス】特別寄稿・コムスコープ社「2020年、無線通信事業者にとって重要な決断の年に」

【特別寄稿・コムスコープ社】2020年、無線通信事業者にとって重要な決断の年に

 通信インフラ向けに製品及びソリューションを提供する世界でも有数の大企業であるCommScope 社。本稿は、アカウントマネージメントディレクター兼サービスプロバイダー事業本部長 加藤 順一氏による特別寄稿として取り上げる。

【2020年、無線通信事業者にとって重要な決断の年に】
 5Gの将来性、それがどれだけ速く、より効率的か、ということについて、私たちはもう何年も話題にしてきましたが、2019年、世界中で本格的なサービス提供の兆しが見えてきました。

 2019年は、韓国のSK Telecom、KT、LG Uplusが国内の主要都市で商業的モバイル5Gサービスを開始しました。その後、ベトナムのViettelはホーチミンとハノイで5G試験運用を行う予定で、シンガポールでは2020年までに5Gサービスが提供開始されることが発表されています。

 その他のアジア太平洋地域への5G対応デバイス導入を含む、幅広い意味での5Gの本格導入にはまだ時間がかかる一方で、2020年は更にあらゆるものがネットワークで繋がる未来の出発点の年となると私たちは確信しています。

 消費者は今後、5Gとそれがもたらす恩恵について耳にし続け、その中に含まれるゲームや拡張現実 (AR)における 低遅延の技術を牽引していくでしょう。ゲームやAR、そしてビデオは、2020年までに全IPトラフィックの82%を占めるだろうと予想されて はいますが、消費者の新体験ニーズや5Gニーズを駆り立てていく決定打となるアプリとは言えません。

 事業者たちは決定打となるアプリの出現を待たずに、2020年は様々な帯域でネットワークを投入し、高密度化、強化することに勤しむと同時に、標準や技術の推進に取り組んでいくでしょう。

■帯域の選択
 世界中の事業者たちは、中間周波数帯(主に3.5GHz)を5Gの主要帯域として選定しましたが、しかしながら、アメリカの事業者にはこの選択肢が無いため、現在の低周波数帯とミリ波周波数帯(24 GHz以上)を使用しています。

 事業者たちは、1エリア1ビットあたりのコスト面では効率性を求めており、どこでどのようにどの帯域を展開していくかはその点に左右されます。言い換えれば、事業者たちがもし高周波数帯を使うと決めれば、ビットあたりのコストは下がりますが、エリアは縮小してしまうため、より多くのセルを展開しなければならず、その結果コストが上がってしまいます。中間周波数帯や低周波数帯を使用する場合は、同じエリアをカバーするのにそれほど沢山のセルを配置する必要がないためコストを下げることが可能となりますが、無線のバンド幅はかなり低くなるため、ビットあたりのコストは高くなります。高密度なエリアでは高周波数を使い、低密度なエリアでは低周波数を使うという最適化方程式が重要な鍵となるでしょう。

 一事業者がどの周波数帯を所有し、展開したかによって、エリアの提供範囲、距離、そして速度が規定されます。その結果、生まれるのが「提供範囲の王者」、「容量の王者」、そして「固定無線」です。

 「提供範囲の王者」は 自分の周波数スペクトルと選択した技術を使って、大きな地理的エリアをカバーしようとします。例えばオーストラリアではほとんどの人口が海岸部に分布していますが、そうであっても国土の内部もカバーされる必要があります。

 「容量の王者」は、ニューヨーク、パリ、ロンドンなどの都市やその他の人口密度の高いエリアにフォーカスし、小規模セルなどの技術に頼って、消費者や企業および接続されたデバイスにスピードと低遅延サービスを提供します。5Gは、多数のIoTデバイスが構築されているネットワーク基盤のサポートに必要な複雑で高バンド幅のデータを管理するのに理想的であるため、さらにスマーター・シティを目指す国々(シンガポールなど)にとっては、これが重要となります。「固定無線」はリーチの長いサービスを提供することに集中し、人口密度の低いエリアのユーザーに経済的にブロードバンド接続を提供します。
 年を追うごとに、オークションや割り当てによって世界の様々な地域でより広い周波数スペクトルが利用可能になっていきます。例えば、香港の移動通信キャリアーたちが最近オークションで各々3.5GHzのうちの50MHzを購入し、香港最大手の事業者であるHKTと共に、2020年の第二四半期に商業的5Gサービスを開始すると発表しています。5Gで3.3〜3.8GHzの範囲の周波数が利用可能となれば、容量(データトラフィック量)・カバレッジ(無線信号が届く距離)の両方が得られ、これは高度な移動広帯域サービスを提供をするのに重要です。

 2020年には、スペクトルの共有が始まり、潜在的可能性がその有用性を証明するでしょう。アメリカでは、Citizens Broadband Radio Service(CBRS)が完全に商業的展開をされ、スペクトラム接続システムを利用して周波数の割り当てが行われるようになります。その他の地域ではこの実験が成功するかを見届け、必要な調整をした上で世界中の他の場所で実行することになるでしょう。

 公式認可された共有スペクトルに加えて、2020年はWi-Fi 6が主流になる年でもあります。Wireless Broadband Alliance(WBA)が行った最近の産業横断的調査にも、この点が表れており、驚くべきことに回答者の90%がWi-Fi 6の配置を既に計画していて、66%は2020年の終わり以前に次のWi-Fi基盤置き換えをおこなう計画だと答えています。

 6GHz帯域にWi-Fiに利用可能なスペクトルを増やそうとする動きがある一方で、消費者の認可・非認可両方のニーズに応えるため、すべてのスペクトルを利用しようとする動きもあります。ドイツのオンラインデータベース企業Statistaの、2025年までに5Gへの接続数は11億になると予想されていますが、Wi-Fi 6はビジネスや人口密度の高い地域における無線接続範囲をを提供するための選択肢なのです。

 2019年、日本ではワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)社が、日本初となるWi-Fi 6の実証実験を行うことを発表しました。これによりレストランなどのユーザー密度が高く高速接続と低遅延から恩恵を受ける可能性のある公共的な場所にも、やがて本格投入されていくことでしょう。

■標準化と技術
 オープン標準は今後も大きな議論の的であり続け、2020年は、無線事業者にとってオープン標準が有益かどうかを検証するための3年間の始まりとなります。O-RAN(OPEN RADIO ACCESS NETWORK) アライアンスは、“世界中の無線アクセス網の進化に注力する”組織です。彼らのビジョンは、ネットワーク上の様々なネットワーク要素、ホワイトボックスのハードウェアや標準化インターフェースを仮想化することです。2018年創立の新しい組織でありながら、既に120以上のメンバー企業が参画し、開放性と知性に向かい取り組んでいます。2020年には、O-RANの重要項目についての合意がなされる予定で、さらに5Gネットワークの普及を加速していくことでしょう。

 多くの無線通信事業者も、massive MIMO(multiple-input and multiple-output)技術の小規模な試験から5Gネットワークの配備を始めました。2020年にネットワークが立ち上がるにつれて、必要とされるデータ量の他、電力・バックホール・用地取得のコストなどにより、ネットワーク配備にmassive MIMOが採用されるかどうか、またいつ採用されるかが決まります。もし容量がもっと必要になれば、2020年にmassive MIMOの配備が増えるかもしれませんが、massive MIMOで効率が上がる一方、複雑さとコストも上昇することとなります。

 TDD(time division duplex 時分割複信)はWi-Fiに使われてきた技術である一方で、FDD(Frequency division duplex 周波数分割複信)はセル方式の世界の大部分で使われてきました。高周波数認可スペクトルの導入により、TDDは5Gでの主流になりつつあります。これによって新たなチャレンジや恩恵がもたらされ、また従来のTDD周波数帯に統合されることから違った種類の複雑さが出現します。しかしTDDスペクトルが加わることにより無線ネットワークが有線ネットワークと競合することが可能になります。

■ネットワークにおける展開
 私たちは2020年を5Gの提供範囲と容量を伸ばす年として捉えています。5Gはマクロセル・サイトと接する必要があるだけでなく、メトロセルの高密度化とビル内システムの強化も必要となります。

 まだ初期段階ですが、根本的な諸問題を取り除くため、データとプロセシングはコアからエッジへと移動し始めています。ネットワークが仮想化されるにつれて、更にそうなっていくことでしょう。
 
 ネットワークのメトロレイヤーがより大切になるにつれ、それらの場所に電力を送り込むことがコストや時間の観点から重要になるでしょう。CommScopeではPBS(power, backhaul and site)について議論を続けてきました。これらの3つの取得はネットワーク構築に欠かせないものであり、5Gでは尚更です。

 5Gが世界中で開始されていきますが、まだ初期の段階といえます。ネットワーク事業者たちには、この技術にその潜在能力を発揮させるため、すべき仕事が沢山あります。2020年はネットワーク事業者が、5Gの将来性を実現するため、ひとつひとつ小さなピースを組み立てる年であり、無線と有線の境目は更にはっきりしなくなっていくことでしょう。

【コムスコープについて】https://ja.commscope.com/
 コムスコープおよび最近グループに加わったARRISおよびRuckus Networksは、有線および無線通信の未来を形作ることによって私たちの明日を再定義する。同社の従業員、イノベーター、技術者のチームが、世界中のあらゆる地域のお客様における課題を予測し、その可能性をさらに押し広げるためのサービスを提供している。

http://www.denpanews.jp/

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