総務省が「長距離無線充電」制度化へ、2020年度世界初の実用化を目指し後押し
総務省が、室内でケーブルを使わずにスマートフォンなどのデバイス(機器)を遠隔充電する「無線電力伝送装置」の実用化に向け、制度設計に入ることが分かった。装置は、離れた場所の機器に電波で電力を送る仕組みで、パナソニックや東芝などが2020年度に世界初の実用化を目指している。同省は、開発に支障が出ないよう装置設置者に対し無線局免許の取得義務付けなどを定めた関係法令を19年度中にも改正して後押しする。
無線電力伝送装置は、電動歯ブラシとその充電器といった電波を送る距離が非常に短い近接型が既に普及。電波法上の取り扱いは高周波を照らしあてる電子レンジなどと同じで、装置の設置者に免許は不要。
実用化を目指す装置は、アンテナから機器に電力を送る距離が数メートル~数キロメートルに及ぶ。電波を遠くに飛ばす長距離型のため、総務省は設置者には通信や放送と同様、電波法や省令による規制をかける方針。
来年度中に周波数の割り当てや電波利用料の支払い、無線局の免許取得を義務付けるための法令整備を、周波数帯や出力の強さなどの技術基準の策定と並行して進める考えだ。ただ、法令による規制が実用化の足かせになる可能性もあるため、簡素化も検討する。同省幹部は「世界に先駆けて制度化することで世界標準を目指す」と話す。
実用化の初期段階では、室内で使用中のパソコンやスマホを有線の充電器に接続せずに充電することが可能になる。また、工場の生産設備やセンサーの無線充電もできるようになる見通しだ。将来的には、屋外での利用を想定しており、飛行する小型無人機「ドローン」への充電や、災害時に電力網が遮断した数キロメートル先の被災地への電力伝送も可能になるという。
一方、通信や放送の電波よりも強い出力で空間に電波を飛ばす仕組みのため、人体への影響を考慮する必要がある。総務省は電波防護指針で、人体に影響がない出力の強さを定めており、装置のメーカーに順守を求める考え。メーカー側も人体に電波が当たると伝送を止める工夫などを検討しているという。