■ 日本市場における国産アプリ構成比はiOS、Androidともに52%
■ 米中市場ではゲームアプリが50%超、日本ではジャンルの多様化が進む
■ iOSアプリの平均単価212円に対しAndroidアプリは1.5倍の327円
■ iOSアプリユーザーの満足度は70.2ポイント、Androidの60.2を上回る
■ 2011年のアプリ市場は102.8億円、2012年は1.6倍の169.3億円に拡大
株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は2月6日、スマートフォン・タブレットのアプリ需要動向に関する調査結果をまとめた。
■ 日本市場における国産アプリ構成比はiOS、Androidともに52%
昨年10月Googleが発表したデータによると、日本のスマートフォンユーザーがインストールしているアプリは平均45を数える。これは調査対象30カ国中最多であり、日本のユーザーにアプリ利用文化が浸透していることが浮き彫りとなった。
ICT総研では、日米中3ヶ国でどのようなアプリが好まれているのかを調査した。表1のグラフは、2011年9月から11月までの有料アプリランキングトップ100の開発企業を国籍別に分類したものである。これによると日本市場においてはiOSアプリ、Androidアプリともに国内開発企業のアプリが52%と過半数を占める。日本国内でも世界中のあらゆるアプリを購入できるが、多くのユーザーは国内のアプリを好む傾向にあるといえそうだ。
もっともこれは日本に限ったことではなく、米国でも同様。また中国は国内事業者が限られているため日本や米国ほど顕著ではないが、それでも自国のアプリが24.0%を占め、米国製21.7%を上回った。
■ 米中市場ではゲームアプリが50%超、日本ではジャンルの多様化が進む
2011年9月から11月までの有料アプリランキングトップ100をジャンル別に分類したのが表2のグラフである。iOSアプリは日本、米国、中国それぞれの市場について見てみたが、いずれにおいても「ゲーム」のジャンルが多数を占めた。携帯電話アプリもさまざまなゲームが登場することによって普及したが、スマートフォンが主流となった今もアプリの主役はゲームといえそうだ。
ただし、日本と米国、中国とでは大きな違いが見られる。米国、中国市場では「ゲーム」の割合が過半数を超えているのに対して、日本市場の「ゲーム」の割合は36%に過ぎない。また、Androidアプリにおいてはさらにその割合は少なく、26%にとどまる。これはAndroid搭載端末を保有するユーザー層の特徴やスマートフォンに最初からインストールされているアプリの種類に起因すると思われる。まだ普及初期段階であるため、いわゆるデジタルリテラシーの高い保有者が多く、ゲームよりも実用性の高いアプリを好むという点、さらにスマートフォンに最初からカスタマイズやツール類のアプリが導入されているため有料版に移行しやすいためだろう。いずれにしても日本は他国に比べ、より幅広いジャンルのアプリが利用されていることは間違いない。
スマートフォンは若い世代を中心に普及してきたが、今後はより幅広い年齢層に広まるっていく。そうなればゲーム以外のアプリの需要がさらに高まる可能性は高い。
■ iOSアプリの平均単価212円に対しAndroidアプリは1.5倍の327円
有料iOSアプリの平均単価を見ると、日本と米国とで大きな違いが表れた。米国が132円なのに対して日本は212円。事実、トップ100のアプリを個別に見てみると、米国ではほとんどが1ドル程度で販売されているが、日本では数百円、なかには1000円以上のものもランクされている。日本のユーザーは気にいったものであれば、ある程度高額でも購入する傾向があるようだ。
なお、Androidアプリの平均価格はiPhoneアプリを大きく上回る327円。これは前述したようにAndroidアプリが比較的安価なゲームよりも実用性の高いアプリに人気が集まっているためと思われる。
■ iOSアプリユーザーの満足度は70.2ポイント、Androidの60.2を上回る
ICT総研ではスマートフォンユーザーに対してiOSアプリおよびAndroidアプリの満足度に関するアンケート調査を実施した。結果はiOSアプリの満足度が70.2ポイント、Androidアプリの満足度が60.2%となり、iOSアプリユーザーの満足度がAndroidユーザーの満足度を10ポイント上回った。
ICT総研ではアプリ以外のネットワークサービスとして、ツイッター、フェイスブック、ミクシー、モバゲー、グリーなどSNSの満足度調査、さらにはEvernoteやDropboxなどのパーソナルクラウドサービスの満足度調査を実施しているが、それらの満足度ポイントはほとんどが50%台で、最もポイントが高かったツイッターでも60.7%だった。これらの比較状況を踏まえると、常時オンラインで利用されるSNSやクラウドサービスと比べて、オフラインでも利用できるスマートフォンアプリは総じて高い評価を得ていると言えそうだ。
■ 2011年のアプリ市場は102.8億円、2012年は1.6倍の169.3億円に拡大
2010年度に急速に拡大したスマートフォン市場は、2011年度に入ってさらに加速し、大幅な伸びを見せた。また、「iPad」のヒットによって火がついたタブレット端末も多くのメーカーが参入することで2011年に急成長を遂げている。
スマートフォン、タブレット端末の普及が進むなかで有料アプリ市場も拡大の一途を辿っており、2011年にはスマートフォン向けアプリが81.3億円、タブレット向けアプリが21.5億円に拡大したと推計される。ただしゲーム市場に限っても国内市場は3,000億円規模であり、全体から見るとまだまだ大きな市場規模とはいえないが、無料アプリが多いことや単価が安いことを考慮すると、アプリ市場が飛躍的に成長したことは間違いない。
ICT総研が実施したアンケート調査や端末普及予測から推計すると、2012年にはスマートフォン向けアプリは前年比約1.6倍の128.1億円、タブレット向けアプリは前年比約2倍の41.2億円に達すると予想される。
スマートフォン、タブレット端末のアプリは開発者にとっては参入しやすい分野であり、今後も多くの開発メーカーや開発者個人が新規参入すると考えられる。そのことを踏まえると、まったく新しいタイプのアプリが生まれる可能性も高く、アプリ市場はますます活況を呈することになるだろう。
【本資料の調査結果・推計データについて】
* この調査は、アプリ関連企業への取材結果に加え、インターネットユーザー5,000人へのwebアンケート調査、各種公開資料などをまとめて分析したものである。
* 本資料におけるアプリとはスマートフォン、タブレット端末、iPodなどの多機能端末で利用できるiOS、Android OS用のアプリケーションソフトを指す。
* 本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、ICT総研スタッフによる取材やアンケート調査、各種文献等を元に当社アナリストが記述・推計したものであり、当該企業や公的機関等の公表値と異なる場合がある。
* 本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、資料公開時点のものであり、その後の市場環境等の変化や新たな分析に基づき予測データ等を予告なく変更する場合がある。