2012年5月 スマートフォン つながりやすさ・切れにくさ実測調査

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■ 電車や高速道路での移動中に音声通話が最も切れにくいのはau。ほぼ途切れない結果に
■ NTTドコモもauに肉薄。特に高速道路移動中の音声通話では、一度も途切れず安定
■ ソフトバンクモバイルも、2社に大きく離されてはいない。混雑時の山手線で底力を見せる
■ ユーザーニーズの高い「ビル地下の飲食店」30カ所の接続成功率も、僅差でauがトップに
■ イー・モバイルは郊外やビル地下で弱みを見せるも、都心部では非常に安定した結果に

 株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は5月28日、スマートフォンのつながりやすさ・切れにくさに関する実測調査の結果をまとめた。 当社では定期的に通信速度に重点を置いた定点観測的な電波調査を実施しているが、それだけでは電波状況の実態が完全に把握できたとは言えない。本調査では、面的なエリアカバー状況の実態を把握すること、また、ユーザーニーズが高いのにつながりにくいと思われている場所の電波状況を把握することを目的としている。調査期間は2012年5月15日から22日まで。

 実際に、ユーザーにアンケートしてみると、「つながって欲しいのに、いつもつながりにくい場所」がかなり存在することがわかる(表6)。上位に挙げられている中で、「地下鉄での移動中」や「地下鉄駅」についてはニーズが高いが、東京メトロや東京都が中心となって2012年末までに電波状況が整備されることが決まっているため、今回の調査対象からは除外した。また、「山の登山道・頂上」や「自宅」についてもニーズは高いものの、恣意的でない測定場所選択が難しいことから調査対象とはしなかった。「飲食店(地下にある店舗)」と「ビルの中(奥の方)」というニーズが高いことから、これを合わせて「ビルの地下にある飲食店(喫茶店)」(表5)を調査対象とした。また、「自動車での移動中(高速道路・トンネル)」というニーズが高いことから、「高速道路での移動中」(表3、表4)を調査対象とした。また、「屋外を走る電車での移動中」というニーズが高いことから、「電車での移動中」(表1、表2)を調査対象とした。
 調査手法は次のとおり。「電車移動中の切れにくさ」や「高速道路移動中の切れにくさ」は、音声通話もしくはデータ通信をつなぎっぱなしにした際に、接続成功していた時間の割合を示した。音声通話については時報(117)、データ通信についてはライブ配信サイト「USTREAM」につなぎっぱなしにして、途切れた時間をストップウォッチで計測し、調査時間全体(100%)から途切れた時間を減じることで接続成功時間の割合を算出した。もちろん、電車内では実際の音声通話はしていない。時報への接続状況を画面で確認する手法を採っている。
 「電車移動中の切れにくさ」(表1、表2)のうち、「山手線」と「近郊3路線(東海道線・中央線・宇都宮線)」は混雑時間帯の切れにくさを測ることを主眼としたために、夕方から夜にかけて(17:00~21:00)実施。それ以外の「新幹線」や「高速道路移動中の切れにくさ」については、高速移動での切れにくさという点に重きを置いたため、混雑時間帯にこだわらず日中に測定した。
 「ビル地下の喫茶店におけるつながりやすさ」(表6)は、都心のビル地下にある喫茶店30カ所で各5回ずつ、計150回にわたり接続を試行した際の接続成功率の平均値を記録した。喫茶店を主に利用する時間帯は日中であると考えられることから、全て日中に測定した。

■ 電車や高速道路での移動中に音声通話が最も切れにくいのはau。ほぼ途切れない結果に。

 調査の結果、電車や高速道路での移動中に音声通話が最も切れにくいのはauであった。山手線で接続成功時間割合98.7%、近郊3路線で99.8%、新幹線で98.1%と電車移動中ではいずれもトップの数値を記録した。高速道路移動中でも首都高で99.8%、東北道・中央道・東名の各高速道路でも99.9%と高い数値を示した。全体的に見て、移動中で音声通話が途切れる割合はわずか0.7%と、ほぼ途切れない状況が確認できた。
  電車や高速道路での移動中のデータ通信については、路線によって結果が分かれた。混雑時の山手線や近郊3路線ではイー・モバイルが最も切れにくい結果となり、高速道路ではNTTドコモやauが安定感を見せた。

■ NTTドコモもauに肉薄。特に高速道路移動中の音声通話では、一度も途切れず安定。

 NTTドコモは電車移動中、高速道路移動中、ビル地下喫茶店と全体的にトップのauに肉薄するなど、最大キャリアとしての面目躍如と言える結果を記録した。特に高速道路移動中の音声通話では首都高、東北道・中央道・東名で4社中唯一、接続成功時間割合100%を記録するなど、抜群の安定感を示した。電車移動中も近郊3路線や新幹線では強みを見せたものの、混雑時間帯の山手線でのデータ通信で75.4%と苦戦した。とくに山手線エリア内でも、トラフィックが集中する渋谷・新宿・池袋エリアで接続できない状態が長く続いたことが響いた。

■ ソフトバンクモバイルも、2社に大きく離されてはいない。混雑時の山手線で底力を見せる。

 ソフトバンクモバイルはau、NTTドコモには及ばなかったものの、大きく離されてはいない。電車移動中での音声通話では、山手線 97.0%(トップと1.7ポイント差)、近郊3路線 96.6%(同3.2ポイント差)、新幹線 96.6%(同1.5ポイント差)と非常に高い接続成功時間割合を記録している。また、データ通信については、混雑時の山手線で88.2%(NTTドコモ 75.4%、au 83.7%)と底力を見せている。ただ、auやNTTドコモと比較すると、電車、高速道路ともに郊外でやや電波状況が弱い傾向は見られた。同社は、電波が届きやすいと言われるプラチナバンド(900MHZ帯)を獲得し、サービス開始に向け準備が進んでいる。サービス開始後にどの程度改善されるか期待したい。

■ ユーザーニーズの高い「ビル地下の飲食店」30カ所の接続成功率も、僅差でauがトップに

 ユーザーアンケートで20%近くのユーザーが「つながって欲しいのに、いつもつながりにくい場所」と回答した「ビル地下の飲食店(喫茶店)」について、30カ所で計150回にわたり定点観測をした結果、音声通話(99.3%)、データ通信(96.0%)ともにauが僅差ながら接続成功率トップとなった。NTTドコモがほぼ引けを取らない結果(音声通話 98.7%、データ通信 94.7%)でこれに続く。比較的大規模なビルの場合には、音声通話、データ通信ともに4社全て快適に接続可能であり、差は付かなかった。だが、比較的小規模なビルの地下となると、特にデータ通信の電波が弱くなる傾向が見られ、接続まで30秒以上経過した場合には接続不可とみなしたこともあって、キャリア間で差が付く結果となった。

■ イー・モバイルは郊外やビル地下で弱みを見せるも、都心部では非常に安定した結果に。

 イー・モバイルはソフトバンクモバイル以上に、郊外やビル地下ではふるわない結果となった。新幹線移動中や高速道路移動中の山岳部で接続できないことが多かったことが、全体の接続成功時間割合に影響した。だが、混雑時の電車移動中では、山手線で4社中トップの96.0%、近郊3路線でもトップの98.0%を記録するなど、都心部で非常に安定した結果となった。同社はデータ通信を主力サービスと位置付けていることもあり、都心部で途切れずに使いやすいという結果はユーザーには心強いはずだ。

■ 今後のネットワーク整備状況に期待。

 本調査では、電車や高速道路での移動中やビル地下の喫茶店など、キャリアのエリアカバー率では表せない利用シーンでの電波状況を調査した。逆に言えば、これらはスマートフォンが現在利用しにくい数少ない利用シーンとも言える。ユーザーアンケートでの要望トップとなった「地下鉄での移動中」についても、今年中に整備される見込みであり、ますますユーザーの利便性は増す。スマートフォン化の流れはますます加速し、とくにデータ通信の需要は増加する一方だが、キャリアにはそれを受け止めるだけのネットワーク整備を今後も期待する。

*「山手線」は山手線1周、「近郊3路線」は東海道線(東京~横浜)・中央線(新宿~立川)・宇都宮線(上野~大宮)の平均値、「新幹線」 は東海道新幹線(東京~三島)を意味する。また、「首都高」は首都高速・都心環状線1周と中央環状線(葛西~大橋)の平均値、 「東北道/中央道/東名」は、東北道(川口~佐野藤岡)・中央道(高井戸~大月)・東名高速(東京~御殿場)の平均値を意味する。
*音声通話については、時報(117)につなぎっぱなしにし、切断状況を画面で確認した。当然ながら、電車内で通話はしていない。
また、通話が切断された場合には速やかに再発信し、平均約10秒で再接続したため、切断1回あたりの切断時間は10秒としてカウント。
*データ通信については、ライブ配信サイト「USTREAM」を視聴し続け、接続できない状態にあった秒数をカウントした。
*都心のビル地下にある喫茶店30カ所で、各5回ずつ計150回接続を試行した際の接続成功率の平均値である。
*30カ所の喫茶店は、「東京・大手町」、「新橋・汐留」、「渋谷」、「新宿」、「池袋」、「横浜」の6エリアで各5か所ずつ 無作為に抽出した。すべて平日10時~17時の間に測定した。
*「音声通話」については、30カ所の喫茶店で固定電話への接続を5回ずつ試みて、接続成功した回数の比率を平均した。
*「データ通信」については、30カ所の喫茶店で、ライブ配信サイト「USTREAM」のトップページが表示されるまでの時間を5回ずつ ストップウォッチで測定した。30秒以内に表示された場合に接続成功とみなし、接続成功した回数の比率を平均した。
*あくまでもビルの地下フロアにある喫茶店であることを重視した。いわゆる「地下街」は調査対象とはしていない。

*アンケートは、携帯電話ユーザーに1,000人に対するWebアンケート結果である。
*「携帯電話がつながって欲しいのに、いつもつながりにくい場所」について、複数回答可能な形式で回答を得た。
*本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、調査実施時点の実測データである
*山手線では、62分間つなぎっぱなしにして測定した
*近郊3線では、合計84分間(東海道線27分間、中央線30分間、宇都宮線27分間)つなぎっぱなしにして測定した
*新幹線では、44分間つなぎっぱなしにして測定した
*首都高では、合計66分間(都市環状線28分間、中央環状線38分間)つなぎっぱなしにして測定した
*東北道/中央道/東名では、音声通話は合計177分間(東北道45分間、中央道65分間、東名67分間)、 データ通信は合計159分間(東北道42分間、中央道56分間、東名61分間)つなぎっぱなしにして測定した

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