2012年10月 ビジネスシーンでのスマートフォン電波実測調査(オフィスビル編)

データ販売無し

■ auが下り・上り速度ともにトップ。下り8エリア中6エリアで最速を記録。
■ ソフトバンクは下り8エリア中2エリアで最速。下り・上り平均速度は2位。
■ NTTドコモは下り・上りともに速度不足の傾向で、下り平均速度は3位。
■ イー・モバイルは下り4位、上り3位と、オフィスビルでは苦戦を強いられた。

 株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は10月30日、ビジネスシーンでのスマートフォン電波実測調査(オフィスビル編)の結果をまとめた。当社で10月10日に発表した「ビジネスシーンでのスマートフォンつながりやすさ実測調査」(つながりやすさ・途切れにくさに焦点をあてたもの)を補完するものとして、ビジネスシーンで重要となるオフィスビルでの通信速度を実測した。ビルが林立しているオフィス街では、高速モバイル通信のエリア内であっても電波が届きにくいことがあり、その実態を検証することを目的としている。調査期間は、10月16日から18日まで。
 調査手法は、次のとおり。ランダムに抽出した都心部8エリア45地点のオフィスビルの入口付近にて、通信速度測定アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を利用して通信速度を計測した。1つの測定地点において、下り通信速度、上り通信速度を各3回ずつ計測。45地点の測定地点において、合計135回の測定を実施した。

■ auが下り・上り速度ともにトップ。丸の内・大手町・霞が関など下り8エリア中6エリアで最速を記録。

 実測の結果、オフィスビル45地点での平均通信速度が最も速かったのは、auであった。下り回線では、全計測場所45地点のうち24地点、上り回線では25地点においてトップの値を示した。
 エリア別に見ると、丸の内・大手町・霞が関など都内8エリア中6エリアにおいて、下り回線速度が最速であった。また、上り回線では丸の内・大手町・新橋など5エリアで最速となった。
 全45地点の下り平均速度は、8.95Mbps、上りは5.28Mbpsと、いずれも次点のソフトバンクモバイル(以下、ソフトバンク)を上回っている。45地点中、15地点で下り通信速度が10Mbpsを上回り、オフィスビル街での強さを見せている。なかでも霞が関エリア、新橋エリア、品川エリアなどでの結果が特に良好であった。「au 4G LTE」のベストエフォート値(下り75Mbps、上り25Mbps)には及ばないが、ビジネスで利用する上で十分な実効速度であると言える。また、同時に測定した音声通話発信成功率(45ヶ所の測定地点において5回ずつ合計225回測定)でも100%を記録している。
 ICT総研が9月に実施した法人ユーザーの満足度調査結果でも、auのiPhoneに対する満足度がトップだったが、今回の調査でもビジネスシーンで強いと評価されるauの強さが実証される形となった。

■ ソフトバンクは下り8エリア中2エリアで最速。下り・上り平均速度は2位。

 ソフトバンクは、45地点全体で、下り平均7.63Mbps、上り平均4.60Mbpsを記録。ともに次点という結果になった。8エリア中、下り回線で最速だったのは新宿エリア、天王洲エリアの2エリア、上り回線では霞が関エリア、新宿エリア、天王洲エリアの3エリアである。
 45地点中、11地点で下り10Mbps超を記録。新橋では20Mbps超を記録する場所があるなど、「Softbank 4G LTE」の電波が安定して受信できる場所では、非常に良好な通信速度を叩きだした。だが、auと比較すると地点間の速度差が大きい点が見られ、そのことが全体平均で及ばない要因になったと考えられる。同社は急ピッチでLTEエリアを拡大することを発表しているが、ビルが林立するオフィス街での地点間の速度差の解消はなされるのかという点でも、同社の今後のエリア改善動向を注視していきたい。

■ NTTドコモは下り・上りともに速度不足の傾向が見られ、下り平均速度は3位にとどまる。

 NTTドコモは郵船ビルディング前(丸の内エリア)、霞が関ビル前(霞が関エリア)、新宿センタービル前(新宿エリア)、品川フロントビル前(品川エリア)の4地点で10Mbpsを超える下り通信速度を記録した。しかし45地点全体では下り平均4.56Mbpsと、au、ソフトバンクとの大きな差が目立つ。LTEサービス「Xi」(クロッシィ)の契約者数が600万人を突破するなど、LTEサービスを開始して間もないauやソフトバンクと比べて利用者数が多いことが、逆に通信速度が出にくい要因であると考えられる。特に上り通信速度では、45地点全体で平均1.37Mbpsと、厳しい結果となった。一方で、音声発信成功率については100%を記録。ビジネスシーンで重要視される音声通話という側面では、安定感を見せた。

■ イー・モバイルは下り4位、上り3位と、オフィスビルでは苦戦を強いられた。

 イー・モバイルはオフィスビル45地点の下り平均通信速度が3.59Mbps(4位)、上り平均速度が2.02Mbps(3位)と、苦戦を強いられた。だが、これは今回の測定端末をスマートフォンで統一したことにより、同社最速のデータ通信サービス「EMOBILE LTE」で計測できなかった影響が大きい。同社のスマートフォン(GS03)のスペック上最大値自体が下り21Mbps、上り5.8Mbpsと、端末の仕様で他社との差があるため、単純な比較は難しい。上り通信速度については、最大値のわりに健闘して面も見られる。音声通話発信成功率については225回試行して223回成功(成功率99.1%)と、100%に僅かに届かなかった。

■ オフィスビル街でも、LTEエリアは目覚ましい勢いで構築が進んでいる。

 ICT総研は、電波がつながりにくいとされてきた都心のオフィスビル街について、つながりやすさ(当社2012年10月10日のプレスリリース 表7)と通信速度(今回調査)の両面から実測したが、携帯電話キャリアのネットワーク増強の成果により、よほどのヘビーユースでなければ他のエリアと遜色ない水準になってきていることがわかった。NTTドコモ、au、ソフトバンクの3社については、今回調査した半分以上の場所でLTEネットワークに接続できた。au、ソフトバンクはLTEサービスを開始して間もないにもかかわらず、短期間でこれだけのネットワークを構築し、十分実用的レベルに達している。また、LTEがつながらないエリアについても3Gネットワークがあるためビジネス利用には全く支障がないと言えるだろう。
 今後は全国的にLTEネットワークの拡充が進むことが見込まれるが、多くのユーザーは、3Gネットワーク・LTE・その他の高速無線通信を総合的に構築できる利便性の高い事業者を選択するようになるのではないだろうか。ICT総研では、「つながりやすさ」や「通信速度」というそれぞれの側面について、ユーザーが利用するさまざまなシーンを想定し、携帯電話・スマートフォンユーザーの指標となる実測データを今後も定期的に提供していく方針である。

【本資料の調査データについて】
* 本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、ICT総研スタッフによる取材、調査、各種文献等を元に当社アナリストが記述・推計したものであり、当該企業や公的機関等の公表値と異なる場合がある。
* 本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、資料公開時点のものであり、その後の市場環境等の変化や新たな分析に基づき予測データ等を予告なく変更する場合がある。

この記事をSNSシェア

REPORT
関連レポート