■ LTE受信地点数217はソフトバンクが最多。下り・上り速度も最速。
■ auはLTE受信地点数が103と最少も、3G通信速度で底力を見せる。
■ NTTドコモは全国的には速度が低調も、長野新幹線の下り速度はトップ。
■ 東海道新幹線と地方の新幹線では、LTEのエリアカバー状況に格差。
株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は11月19日、新幹線全97駅でのスマートフォンLTE通信速度実測調査の結果をまとめた。弊社では、過去にさまざまな利用シーンでの通信速度やつながりやすさの実測調査を実施しているが、今回の調査では、年間3億人が利用する日本の大動脈・「新幹線」に焦点を絞り、通期営業の全97駅での電波状況の実態把握を目的とした。
調査期間は、11月5日から13日まで。調査手法は次のとおり。新幹線全97駅で、ホーム、改札付近、駅前広場の3地点で下り通信速度、上り通信速度を各3回ずつ計測。97駅291地点において、1端末あたり873回の測定を実施した。測定には、通信速度測定アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を利用した。
■ LTE受信地点数217はソフトバンクが最多。下り・上り速度も最速。
実測の結果、新幹線全97駅291地点での平均速度が最も速かったのは、ソフトバンクモバイル(以下、ソフトバンク)であった。下り平均速度は9.17Mbps、上りは4.31Mbpsと、次点のau(下り7.02Mbps、上り3.16Mbps)を大きく上回っている。路線別に見ても、秋田新幹線、長野新幹線を除く、8路線中6つの新幹線で最速であった。特に、東海道新幹線(平均11.43Mbps)、山陽新幹線(平均10.07Mbps)、山形新幹線(平均10.72Mbps)では2ケタを超える下り通信速度を記録するなど、強さを見せた。LTE受信地点数で見ても全291地点中217地点で受信できる(74.6%)など、LTEエリアの広さが実証され、安定してLTEを受信できた。9月21日に「4G LTE」のサービスが開始されてまだ日が浅いが、LTEネットワークは急拡大していると実感できる。
■ auはLTE受信地点数が103と最少も、3G通信速度で底力を見せる。
auは新幹線全97駅291地点で、LTE受信地点数が103と3社中最少(カバー率35.3%)。新幹線駅でのLTEネットワーク構築状況は他社に後れを取った。ただ、通信速度については、下り平均 7.02Mbps、上り平均 3.16Mbpsを記録し次点。LTE受信地点数の少なさが影響して、トップのソフトバンクに下りは約2Mbps、上りは約1Mbps及ばなかったが、NTTドコモを上回った。LTEを受信できない地点での3G通信速度が下り平均 3.35Mbpsと、他社(NTTドコモ 3.18Mbps、ソフトバンク 2.72Mbps)よりも僅かに速い結果が出ており、3Gでの下り最大通信速度が9.2Mbpsに対応したことが影響している可能性がある。だが、他社がLTEエリアカバーを急ピッチで拡げている状況であり、LTEエリアの早期拡大が望まれる。
■ NTTドコモは全国的には速度が低調も、長野新幹線の下り速度はトップ。
NTTドコモは新幹線全97駅291地点でLTE受信地点数は189と、トップのソフトバンクには及ばないものの、6割以上のLTEエリアカバーを見せた。一方で、通信速度については、下り平均 6.36Mbps、上り平均 1.13Mbpsと芳しくない結果となった。特に上り通信速度については、他社と比べて遅さが際立つ。下り速度については、長野新幹線では8.22Mbpsとトップを記録したものの、山陽新幹線ではLTE受信地点数が53地点とトップでありながら速度は6.21Mbpsと最下位となるなど、全体的に通信速度で苦戦を強いられた。LTEが受信できる地点だけで見た場合の下り平均速度で見ても、NTTドコモは8.08Mbpsと唯一の1ケタに留まった(au 13.72Mbps、ソフトバンク 11.36Mbps)。LTEエリアカバーの充実はもちろんだが、LTEネットワークが既に構築されている地点での実効速度の向上が望まれる。
■ 東海道新幹線と地方の新幹線では、LTEのエリアカバー状況に格差。
今回調査対象地点とした全97駅291地点の中で、LTEを受信できた地点数は、ソフトバンク 217、NTTドコモ 189、au 103である。キャリアごとの格差もこのように大きいが、地域格差もやはり大きい。東海道新幹線と地方の新幹線では、LTEエリアカバー状況に格差が見られた。速度面で見ても、東海道新幹線では、下り通信速度の3社平均が9.48Mbpsに達するのに対し、山形新幹線は6.34Mbps、秋田新幹線は6.45Mbps、上越新幹線は6.06Mbps、長野新幹線は5.44Mbpsと、大きな開きがある。明らかに乗降客数の少ない地方の新幹線駅までもLTEエリア化する必要はないが、LTEエリアカバーの地域格差は徐々に埋めていく必要があろう。
各社ともに今後のLTEエリア展開について早期の拡大を目標に据えており、ユーザーにとって屋外での通信環境が徐々に整ってきていることは間違いない。エリア完成後にユーザー数が増加した状態でも、快適にモバイルデータ通信が利用できる環境こそが最終的に求められており、携帯電話キャリアにはそのためのインフラ作りを期待したい。
ICT総研では今後も「つながりやすさ」や「通信速度」というそれぞれの側面について、ユーザーが利用するさまざまなシーンを想定し、携帯電話・スマートフォンユーザーの指標となる実測データを提供していく方針だ。
【本資料の調査データについて】
* 本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、調査実施時点の実測データである。