■ ソフトバンクが下り速度17.27Mbpsでトップ。東名阪で特に強み。
■ auは下り速度16.63Mbpsで次点。上り速度は9.15Mbpsでトップ。
■ NTTドコモは下りで4位、上りで5位と低調も、札幌市の下り速度でトップ。
■ イー・モバイル、UQ WiMAXは全体的に苦戦も、局所的には良好な結果に。
株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は2月22日、全国168地点でのモバイルルーター通信速度実測調査の結果をまとめた。当社では過去にスマートフォンでの電波実測調査をさまざまなシーンで実施しているが、今回の調査ではモバイルルーターに焦点を当て、地点ごとの通信速度の実態を把握することを目的とした。外出先でモバイルルーターを介してノートパソコンやタブレット端末でインターネットに接続する需要は都市部が中心であると考え、全国の全政令指定都市20都市に東京都心を加えた21都市を調査対象として抽出。その中で、各都市ごとに代表的な地点を8カ所ずつランダムにピックアップし、全国合計で168カ所を調査地点とした。
調査手法は次のとおり。各モバイルルーターをモバイルノートパソコンにつなげてインターネットに接続し、通信速度測定サイト「RBB TODAY スピードテスト」を利用して通信速度を測定した。1つの測定地点において、下り通信速度、上り通信速度を各3回ずつ測定。168カ所の測定地点において、1端末あたり合計504回の測定を実施した。各地点では、施設・街区の入口前付近を測定場所とした。調査期間は1月22日から2月12日まで。測定の際は、繁忙時間帯(7~9時、12~13時、17~20時)を除いた。
今回の調査では、政令指定都市の代表的地点をピックアップしたこともあり、調査対象とした5キャリアの5機種全てがLTEもしくはWiMAXの電波を受信できた。このため、LTE受信エリアの優劣比較とはならず、通信速度のみの調査結果比較となる。
■ ソフトバンクが下り速度17.27Mbpsでトップ。東名阪で特に強み。
実測の結果、全国168地点での下り通信速度が最も速かったのは、ソフトバンクモバイル(以下、ソフトバンク)であった。同社の「ULTRA WiFi 4G」の下り通信速度の全国平均は17.27Mbpsと、次点のauを上回った。「下り通信速度」はインターネットのダウンロード速度を意味し、ホームページや動画の閲覧などの快適さに直結する。ソフトバンクは全国21都市のうち14都市で下り通信速度トップを記録。東京から名古屋にかけての7都市、堺から神戸にかけての3都市など、東名阪のエリアで特に強みを見せた。全国21都市の全てで10Mbps以上の下り通信速度を記録しており、安定している。当社で2012年11月に実施した「全国200地点スマートフォンLTE通信速度実測調査」や「新幹線全97駅スマートフォンLTE通信速度実測調査」でもトップであったが、モバイルルーターという切り口で見ても、下り通信速度トップは揺るがなかった。一方で、上り通信速度については、過去調査と比べて同社の数値が劣っているわけではないものの、auやイー・モバイルがそれを上回る通信速度を記録したため、3位という結果になった。
■ auは下り速度16.63Mbpsで次点。上り速度は9.15Mbpsでトップ。
auは、「au 4G LTE」の下り通信速度の全国平均が16.63Mbpsで次点。下り通信速度トップの都市数は、6都市とソフトバンクに差をつけられているものの僅差での次点が多く、高い水準で安定していることに変わりない。一方で、上り通信速度の全国平均は9.15Mbpsでトップを記録した。「上り通信速度」は、SNSなどインターネット上に写真などのデータをアップロードする際の快適さにつながる。上り通信速度トップの都市数は、21都市中20都市と、他を圧倒する結果を見せた。当社の過去の通信速度調査では、iPhone5をauの調査対象機種として使用しており、周波数帯が狭いためにLTE受信エリアが限定的であったが、今回の調査ではiPhone5限定エリアにとらわれずに測定できたことが、下り、上りともに通信速度が大きく増加した要因だと考えられる。
■ NTTドコモは下りで4位、上りで5位と低調も、札幌市の下り速度でトップ。
NTTドコモの「Xi」は、下り通信速度の全国平均が9.25Mbpsで5社中4位、上りが1.93Mbpsで5社中最下位と低調な結果となった。特に上りは他社に大きく差をつけられており、厳しい状況だ。ただし、札幌市は下り15.74Mbpsでトップ、仙台市でも17.39Mbpsと良好な結果を記録した。同社では2012年11月より一部のエリアで下り最大100Mbpsのサービスを始めており、2都市がこの対象エリアであったことが要因だと考えられる。同社ではこの下り最大100Mbpsエリアを順次拡大する方針を示しており、これが実現されると、他都市でも札幌市や仙台市並みの通信速度が実現できるようになる可能性がある。
■ イー・モバイル、UQ WiMAXは全体的に苦戦も、局所的には良好な結果に。
イー・モバイルの「EMOBILE LTE」は、下り通信速度の全国平均が9.89Mbpsと5社中3位だが、2位のau(16.63Mbps)とは大きく離されてしまった。ソフトバンク、auの2社と比べると、通信速度の速い地点と遅い地点の差が大きいことが苦戦の要因だと考えられる。一方で、上り通信速度は7.10Mbpsでauに次ぐ次点。横浜市ではトップを記録するなど、強さを見せた。最も下りと上りの通信速度の差が小さいキャリアであると言える。
UQ WiMAXは、下り通信速度の全国平均が8.25Mbpsで最下位、上りが3.34Mbpsで5社中4位という結果になった。絶対値自体は他社に劣るものの、21都市中5都市で下り平均10Mbps超を記録。LTE規格ではなく、理論上のベストエフォート値が下り40Mbpsとそもそも小さいことを加味すれば、善戦した結果であると言えそうだ。
当社の過去調査(2012年11月実施)では、キャリアによってはLTEカバー率が60%程度にとどまっていたが、今回の調査では5キャリアともカバー率100%。政令指定都市の代表地点に絞ったためとも考えられるが、やはり各キャリアの日々のエリア拡大の取り組みの成果であると言えるだろう。各社ともさらなるエリア拡大、速度向上を掲げており、ユーザーの利便性は増すばかり。一見差がないように見えるが、実際に測定してみると、ある程度の違いは浮き彫りになってくる。
ICT総研では今後も、「つながりやすさ」や「通信速度」というそれぞれの側面について、ユーザーが利用するさまざまなシーンを想定し、ユーザーにとって指標となる実測データを定期的に提供していく方針である。
【本資料の調査データについて】
*本資料における全ての文章、数値、表、データは、調査実施時点のものである。
*調査に使用したモバイルルーターは、NTTドコモ 「L-03E」、au 「HWD11」(Wi-Fi Walker LTE)、ソフトバンク 「102HW」、イー・モバイル 「GL04P」、UQ WiMAX 「WM3600R」である。
*調査に使用したモバイルノートパソコンは、acer 「Aspire V5」である。