■ auがLTEエリア比率100%とLTEの広さで強み。下り速度 23.7Mbpsも最速。
■ NTTドコモはLTEエリア比率99%と着実に拡大するも、平均速度では3位。
■ ソフトバンクは上り速度で強みを見せるも、地方エリアのLTE化で弱み。
株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は11月12日、新幹線全97駅でのiPhone5s電波状況実測調査の結果をまとめた。当社では、過去にさまざまな利用シーンでの通信速度やつながりやすさの実測調査を実施しているが、今回の調査では、1年ぶりに年間3億人が利用する日本の大動脈・「新幹線」に焦点を絞り、冬季のみ営業のガーラ湯沢駅を除く全97駅での電波状況の実態把握を目的とした。
調査期間は、10月24日から11月5日まで。調査手法は次のとおり。新幹線全97駅の駅ホーム、改札付近、駅前広場の3地点(合計291地点)で下り通信速度、上り通信速度を各3回ずつ測定。測定端末はNTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル(以下、ソフトバンク)のiPhone5s、測定アプリは「RBB TODAY SPEED TEST」を利用した。
■ auがLTEエリア比率100%とLTEの広さで強み。下り速度 23.7Mbpsも最速。
実測の結果、新幹線全97駅291地点で最もLTEエリアカバー比率が高かったのはauであり、291地点全ての地点でLTEを受信できた。1年前に当社が実施した同じ調査と比べて、LTE受信地点数は2.8倍に拡大している。これにより、下り(ダウンロード)の通信速度でも、全国で23.68Mbpsと3社中唯一の20Mbps超えを果たした。路線別に見ても、長野新幹線以外の全ての新幹線で下り通信速度トップを記録した。特に山形新幹線(平均24.92Mbps)、秋田新幹線(平均26.32Mbps)、上越新幹線(平均23.32Mbps)では、他社との差が開いた。「4G LTE」のサービスが開始されてまだ1年足らずだが、同社が「LTEの全国実人口カバー率97%」と公表する800MHz帯にiPhone5sが対応したことの効果が如実に表れており、LTE受信可能エリアが急拡大していると実感できる。
■ NTTドコモはLTEエリア比率99%と着実に拡大するも、平均速度では3位。
NTTドコモは新幹線全97駅291地点でLTE受信地点数は288。トップのauにはわずかに及ばなかったものの、LTEエリア比率99.0%と安定した結果を見せた。LTEエリアの拡大という意味で、同社が進める「全国Xi基地局倍増」計画が順調に推移していることを実感できる結果である。ただし、通信速度については、下り 17.88Mbps、上り 4.69Mbpsと、ともに他社に一歩及ばなかった。特に上り通信速度の遅さは著しい。同社は下り最大112.5Mbps、最大150Mbpsnに対応するエリアを順次拡大しているが、その影響か、地方の一部でいわゆる爆速地点が増加した傾向が見られた。
■ ソフトバンクは上り速度で強みを見せるも、地方エリアのLTE化で弱み。
ソフトバンクは新幹線全97駅291地点で、LTE受信地点数が269(LTEエリア比率92.4%)、下り通信速度が19.05Mbps。1年前の同調査と比べてLTE受信地点数は大きく拡大したが、トップのauには及ばなかった。基幹路線である東海道新幹線や、都市部の駅ではLTEエリアがほぼ100%だが、地方の駅(県庁所在地や政令指定都市以外の駅)でLTEエリア比率が90%と弱みを見せた。一方で、上り(アップロード)通信速度については全体で9.75Mbpsと3社中最速。路線別に見ても、新幹線8路線中6路線でトップとなった。ともに5MHz幅であった2.1GHz帯と1.7GHz帯のLTE網を、それぞれ10MHz幅に倍増させることで、通信速度を倍速化させる「倍速ダブルLTE」化の影響が、駅ホームを中心に測定結果に反映されていることを実感できる。
今回調査対象地点とした全97駅291地点の中で、LTEを受信できた地点数は、au 291、NTTドコモ 288、ソフトバンク 269である。1年前のLTEエリア比率は3社平均で58%に過ぎなかったが、今回調査では3社平均で実に97%に達している。もちろん、この調査をもって全国のLTEカバー状況全てを総括するつもりはないが、この「新幹線駅」という切り口で見れば、1年前に当社で同内容の調査を実施した時と比べて、各社のLTEエリアが劇的に拡大していることが実感できる。また、東海道新幹線と地方の新幹線路線で大きく見られた地域格差も、今回調査では確実に縮小した。実質的に「LTE元年」となった昨年と比べ、わずか1年間でのキャリア各社のこの改善ぶりには、頭が下がるばかりだ。各社とも今後さらなるLTEエリア拡大・増強を目標に据えており、ユーザーにとって快適にモバイルデータ通信が利用できる環境がますます期待される。
ICT総研では今後も「つながりやすさ」や「通信速度」というそれぞれの側面について、ユーザーが利用するさまざまなシーンを想定し、携帯電話・スマートフォンユーザーの指標となる実測データを提供していく方針だ。
【本資料の調査データについて】
*本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、調査実施時点の実測データである。