■ ビル1階は4社平均のLTE比率が96%だが、ビル上階では86%と差があり。
■ NTTドコモはビル上階でLTE比率85%と苦戦も、1階と上階の速度差は少ない。
■ auは、ビル上階で下り速度19.0Mbpsとトップ。LTE比率は全体で100%。
■ ソフトバンクは、ビル1階での下り速度19.3Mbpsでトップ。上り速度でも強み。
株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は5月2日、都心部オフィスビルにおけるスマートフォン電波状況実測調査の結果をまとめた。当社では、過去にさまざまな利用シーンにおいて、通信速度やつながりやすさの実測調査をしているが、今回の調査では、東京都心部のオフィスビル(主に高層ビル)を対象とした。都心部のオフィスビルは、LTEのエリアカバー自体はもちろんされているものの、遮蔽物等の関係でLTEでの高速データ通信をしにくい場合があると言われており、現状におけるその実態把握を目的とした。特にビルの上階での実測調査は目新しいものだと考えられる。
調査期間は、4月10日から23日まで。東京都心部の40箇所のオフィスビルの「1階」と「上階」(一般人が入れる、可能な限り上階)それぞれ40地点ずつ合計80地点で測定した。通信速度は、測定アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を利用して、下り通信速度、上り通信速度を各3回ずつ測定する形式とした。測定端末は、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル(以下、ソフトバンク)が「iPhone5c」。イー・モバイルが「EM01F」である。
■ ビル1階は4社平均のLTE比率が96%だが、ビル上階では86%と差があり。
実測の結果、ビル1階のLTE受信比率が4社平均で96.3%なのに対し、ビル上階では85.6%とやや差が付いた。ビル上階では、地上付近からの電波が届きにくいため、ビル内部等に電波対策がされているかどうかが受信状況に影響していると考えられる。エリア別に見ると、丸の内エリアや大手町エリアでビル上階のLTE比率が特に低い傾向が見られる。また、auが唯一、ビル1階でも、ビル上階でも、全ての地点でLTEを受信できた。
■ NTTドコモはビル上階でLTE比率85%と苦戦も、1階と上階の速度差は少ない。
携帯電話キャリア別に見ると、NTTドコモは、LTE受信比率がビル1階では90.0%なのに対して、ビル上階では85.0%。ともに4社平均を下回った。特にビル上階の85%は、苦戦していると言わざるを得ない。通信速度については、下り速度は4社平均と同程度、上り速度は平均を下回った。ただし、下り速度はビル1階では17.79Mbps、ビル上階では17.88Mbps、上り速度がビル1階では4.84Mbps、ビル上階では5.46Mbpsと、1階と上階の速度差が少なく、安定している。エリア別には、丸の内エリア、新橋・汐留エリアで平均を大きく上回る通信速度をビル上階で記録している。
■ auは、ビル上階で下り速度19.0Mbpsとトップ。LTE比率は全体で100%。
auは、下りの通信速度が、ビル1階で18.35Mbps(4社中2位)、ビル上階が18.99Mbps(4社中トップ)、上りの通信速度が、ビル1階で5.52Mbps(4社中2位)、ビル上階が6.07Mbps(4社中2位)と全体的に速度が安定している。上りの通信速度はトップに差を付けられたものの、ビル1階よりも電波状態の面で悪条件だと考えられるビル上階で、通信速度がしっかりと出ている点が特徴的だ。また、ビル1階でもビル上階でも、今回測定した合計80地点全てでLTEを受信できた。LTE受信比率100%はauだけであり、同社がセールスポイントとするプラチナバンド(800MHz帯)でのLTE網が都心部のオフィスビル街でも整備されているものと考えられる。エリア別には、大手町エリア、新宿エリアで平均を大きく上回る通信速度をビル上階で記録した。
■ ソフトバンクは、ビル1階での下り速度19.3Mbpsでトップ。上り速度でも強み。
ソフトバンクは、LTE(4G)受信比率がビル1階で100%、ビル上階で90.0%(4社中2位)、下りの通信速度がビル1階で19.27Mbps(4社中トップ)、ビル上階で18.14Mbps(4社中2位)、上りの通信速度がビル1階で10.56Mbps(4社中トップ)、ビル上階で9.31Mbps(4社中トップ)となった。LTE(4G)受信比率についても、通信速度についても、全体的に優れた結果を記録した。特に、ビル1階での受信環境の良好さが光る。また、上りの通信速度は、全体的に他社を大きく上回る数値を記録しており、強さを見せた。一方で、ビル1階に比べると、ビル上階での測定結果がLTE受信比率、通信速度ともに低く出ている。同社が今後本格化させる予定のプラチナバンド帯のLTE化が進んだ際に、この状態がどの程度改善されるか注目される。エリア別には、品川エリアで平均を大きく上回る通信速度をビル上階で記録した。
また、ソフトバンクグループのイー・モバイルは、ビル1階こそLTE比率95.0%と4社平均と同水準を記録したものの、ビル上階でのLTE比率や通信速度など、全体的に他社水準を下回る結果となった。測定に使用した端末「EM01F」は、ソフトバンクのLTE(4G)電波を受信できる端末であるが、ソフトバンクのiPhone5cと比べると快適に受信できるエリアが限られている実感だ。
今回調査対象とした東京都心のオフィスビル40箇所(80地点)は、文字通りビルが林立するエリアであり、遮蔽物だらけのため、電波状況を測定するには過酷な状況と言える。そんな中でも特に悪条件と言えるビル上階においても、4社平均で85.6%のLTE(4G)受信比率を記録したことには、感心させられる。プラチナバンド帯LTEの整備が進んでいることや、各社のオフィスビルでのピンポイントな電波状況改善対策の積み重ねの結果だろう。各社ともさらなるLTEエリアの整備、理論上の通信速度の向上を目標に据えており、ユーザーにとって快適にモバイルデータ通信が利用できる環境がますます期待される。
ICT総研では、今後も「つながりやすさ」や「通信速度」というそれぞれの側面について、ユーザーが利用するさまざまなシーンを想定し、携帯電話・スマートフォンユーザーの指標となる実測データを提供していく方針だ。
*本資料における全ての数値、表、グラフデータは、調査実施時点の実測データである。
*測定期間は、4月10日から23日まで。繁忙時間帯を除く平日日中の時間帯とした。
*測定端末は、NTTドコモ、au、ソフトバンクが「iPhone5c」、イー・モバイルは、「EM01F」。
*通信速度は、速度測定アプリ「RBB TODAY スピードテスト」を利用して測定。1地点あたり下り速度、上り速度を3回ずつ測定し、平均値をその地点の速度とした。
*測定地点は東京都心部の40箇所のビルとした。1つのビルあたり、「1階」と「上階」それぞれで40地点ずつ測定。「上階」は、一般人が入れる、可能な限り上階にて測定。上階に行けない場合には、地下や1階の別の場所などを測定地点とした。
*40箇所のビルの内訳は、丸の内エリア 7、大手町エリア 7、赤坂・六本木エリア 7、新橋・汐留エリア 6、新宿エリア 7、品川エリア 6である。