- ■ 下り速度トップはソフトバンク。34.89Mbpsと、高水準の争いの中で頭一つ抜け出す。
- ■ auは上り7.37Mbpsと苦戦も、東名阪全てで平均30Mbps以上と下り速度が安定。
- ■ NTTドコモは上り速度で優位性を示すも、地域ごとのバラつきが見られる。
- ■ 下り通信速度は、ここ3年間で34倍。LTE比率も3社ともに100%に。
株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は10月8日、待ち合わせ場所100地点 iPhone6電波状況実測調査の結果をまとめた。当社では定期的に、さまざまなシーンでスマートフォンの通信速度、つながりやすさの調査を実施してきたが、今回の調査は9月19日に発売されたiPhone6の電波状況比較を目的とした。
実際にユーザーが利用する機会の多い地点での比較とすべく、東京、大阪、名古屋の主要な「待ち合わせ場所」100地点を測定地点とし、NTTドコモ、au (KDDI)、ソフトバンクモバイル(以下、ソフトバンク)のデータ通信速度の実態を調査した。
調査手法は、通信速度測定アプリ「RBB TODAY スピードテスト」を利用して、1地点あたり下り通信速度、上り通信速度を各3回ずつ測定し、その平均値を採用する形を採った。調査期間は9月26日から29日まで。実効速度の上限に近い値を把握すべく、可能な限り繁忙時間帯を除いた。これにより、地点ごとの現実的な実効速度のベストエフォート値を示せたと考えられる。
■ 下り速度トップはソフトバンク。34.89Mbpsと、高水準の争いの中で頭一つ抜け出す。
実測の結果、下り通信速度(ダウンロード速度)はかつてない高水準の争いとなったが、その中で平均34.89Mbpsと頭一つ抜け出して1位となったのは、ソフトバンクであった。上り通信速度(アップロード速度)は平均8.38MbpsとNTTドコモに差を付けられたものの、下り通信速度では、東京で平均32.51Mbps、大阪で40.91Mbps、名古屋で34.35Mbpsと三大都市圏それぞれでトップとなり、強さを見せた。中でも、「サカエチカ クリスタル広場」で下り102.44Mbps、「目白駅前広場」で91.74Mbpsを記録するなど、いわゆる“爆速”地点も多く記録。下り平均30Mbps超の地点が100地点中54地点、同50Mbps超の地点が17地点と、多くの地点で高速データ通信が可能であることを裏付けた。下り通信速度トップの地点数も45地点で3社中最多。
同社は、もともとiPhoneに対応していた「SoftBank 4G LTE」に加え、Wireless City Planningが提供する「AXGP」方式を使った「SoftBank 4G」が、今回初めてiPhoneに対応した。「Hybrid 4G LTE」と同社が呼んでいるように、このLTEの2つの規格に対応したことが、下り通信速度で他社を一歩上回った大きな要因だと考えられる。また、ソフトバンクグループのワイモバイルやWireless City Planningのネットワークを利用できる点も、通信速度、通信エリアの両面でユーザーにとって大きなメリットだろう。ソフトバンクは、4つの周波数帯(2.1GHz、1.7GHz、900MHz、2.5GHz)を利用した、112.5Mbpsと110Mbpsの2つの安定した高速ネットワークが構築されている。
■ auは上り7.37Mbpsと苦戦も、東名阪全てで平均30Mbps以上と下り速度が安定。
auは、上り通信速度が平均7.37Mbpsと、他社と比べて低い結果となり、苦戦を強いられた。一方で、下り通信速度については、ソフトバンクには及ばないまでも、平均32.18Mbpsと十分な通信速度を記録。東京が平均30.93Mbps、大阪が35.60Mbps、名古屋が31.49Mbpsと、三大都市圏全てで30Mbps超を記録し、安定感を見せた。中でも、「心斎橋OPA本館前」では下り118.24Mbpsを記録するなど、“爆速”地点も存在した。100地点中、下り平均30Mbps超は43地点、同50Mbps超は12地点となった。
同社は、「人口カバー率99%」と同社が公表するプラチナバンド帯(800MHz帯)を中心に、LTE網の整備を進めている。iPhone6は、電波を束ねて下り最大150Mbpsを実現する「キャリアアグリゲーション」のサービスや、KDDIグループのUQコミュニケーションズが提供する高速通信サービス「WiMAX2+」にも対応。これらのサービスの対応エリアを今後さらに拡大させる方針を示している。
■ NTTドコモは上り速度で優位性を示すも、地域ごとのバラつきが見られる。
NTTドコモは、下り通信速度が平均30.19Mbps、上り通信速度が平均13.61Mbpsという実測結果になった。下り通信速度に関しては3位であったが平均30Mbpsを超え、上り通信速度が3社中トップと、全体として良好な数値を記録している。だが、下り、上りともに、大阪、名古屋に比べて東京の結果が劣るなど、地域別の速さのバラつきが他社よりも多く見られ、どの地点でも安定している状況だとは必ずしも言い切れない。100地点中、下り平均30Mbps超は38地点、同50Mbps超は12地点となった。
同社は、「Xi」の契約数が1,500万件を超えるなど、LTE契約者数の多さゆえに、密集地や繁忙時に混雑する状況も過去に見られたが、今回の調査でその状況が改善している点は確認できた。LTEサービスを提供する4つの周波数帯のうち、1.7GHz帯と1.5GHz帯では、帯域の全てをLTEに割り当てており、この「フルLTE」化が、今回の実測結果にも大きく影響したと考えられる。同社では、2014年度末にLTE基地局数9.5万件や、「LTE-Advanced」(最大225Mbps)の導入など具体的な目標を掲げている。
■ 下り通信速度は、ここ3年間で34倍。LTE比率も3社ともに100%に。
ICT総研がスマートフォンの通信速度の定期的な実測を開始したのは2011年。iPhone4S発売直後の2011年には、3社平均で下り 0.95Mbpsだったが、3年後の今回調査では、3社平均で下り 32.42Mbps。ここ3年間で、通信速度が34倍になったことには驚かされる。また、実測ベースのLTE(4G)比率についても、2013年は3社平均で99.7%のカバー率だったが、今回調査では3社平均でついに100%を記録した。
2011年当時は主に3G回線での実測だったが、2012年にはLTE回線のサービスが本格的にスタート。各携帯電話キャリアがLTEネットワークを拡充させたことに比例して、実測値も右肩上がりで増加していった。少なくとも、今回調査対象としたような都市部の中でもスマートフォンを利用する機会の多い地点では、エリアカバー率、通信速度ともに不満を感じるユーザーは少ないだろう。
もちろん、今回の調査結果(東名阪100地点での実測結果)をもって、全国のLTE通信速度の実態を網羅できているわけではないが、実際にユーザーが利用する機会の多い大都市部での実測結果であるという意味では、参考にしてもらえる調査データだと考えている。
ICT総研では今後も、「つながりやすさ」や「通信速度」について、ユーザーが利用するさまざまなシーンを想定し、ユーザーにとって指標となる実測データを定期的に提供していく方針である。
* 本資料における全ての文章、数値、表、データは、調査実施時点のものである。
* auおよびソフトバンクのiPhone6端末上で「4G」と表示されるものを、本稿では「LTE」と表現した。