- ■ 日本のスマートフォン料金は、調査対象6カ国中、最も安い水準に。
■ 日本の4G接続率は、99.4%。調査対象6カ国の中で最も高い。
■ 日本の携帯電話ユーザーの料金満足度は48.0%。前回調査と比べて改善。
株式会社ICT総研は、2022年1月24日、「2022年1月 スマートフォン料金と通信品質の海外比較に関する調査」の結果をまとめた。
2018年夏に政府から「4割値下げする余地がある」と指摘されるなど、日本の携帯電話料金は高いという印象を持たれていたが、その後携帯電話事業者各社が相次いで新たな料金プランを投入。オンライン専用プランを含め、ここ1年で日本のMNO(移動体通信事業者)の新たな料金体系も定着した感がある。
重要な基幹インフラとして重視される「通信品質」との比較も加え、日本の通信料金の現状を把握することをこの調査の目的とした。
調査対象は日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国の 6 カ国の MNO とし、各国のスマートフォン料金は2021年12月1日時点のものとした。また、日本の携帯電話ユーザー向けに Web アンケート調査を2021年12月に実施した。この調査は、2020年7月に当社が発表した同様の調査の続編という位置付けである。
■ 日本のスマートフォン料金は、調査対象6カ国中、最も安い水準に。
調査の結果、2021年12月1日時点の6カ国の月額のスマートフォン料金の平均は、データ容量2GBの場合が3,538円、5GB 3,895円、20GB 4,614円、無制限 7,097円。全体的に、日本とイギリスの料金が安く、アメリカやドイツの料金が高い結果となった。
日本はデータ容量2GB(1,477円)、20GB(2,445円)の月額料金が6カ国の中で最も安く、イギリスは5GB(2,222円)、無制限(3,777円)の料金が6カ国の中で最も安い。日本が最も安いデータ容量区分の次点はイギリス、イギリスが最も安いデータ容量区分の次点は日本である。
アメリカは2GB、5GB、20Gの区分でいずれも6カ国の中で最も高く、ドイツはいずれのデータ容量区分においても、6カ国平均の料金を上回るなど、全体的に高い水準にある。
前回の調査(2020年7月発表)では、日本の料金は6カ国の中で「中位レベル」であったが、今回の調査では大きく低下し、6カ国の中で最も安い水準になっていることが分かった。
■ 日本の4G接続率は、99.4%。調査対象6カ国の中で最も高い。
今回の調査では、各国の通信品質を比較するために、株式会社Agoopの調査データを参照した。このネットワーク接続率結果では、4G接続率は日本が99.4%で6カ国中トップ。韓国が96.0%、米国が93.1%で続いた。
日本は4G接続率がトップであるだけでなく、3G接続の割合も0.3%。「圏外・タイムアウト」の割合もわずか0.3%しかなく、通信品質は6カ国の中でトップであると言える。
欧州の3カ国は日米韓の3カ国に比べて4G接続率が一段低い結果である。2Gや3Gの通信方式で接続している割合が約1割あり、「圏外・タイムアウト」の割合も比較的高い。
表1で示した料金と、表2で示した4G接続率を掛け合わせたものが、表3のグラフである。グラフの縦軸はスマートフォンの料金、横軸は4G接続率を示している。日本は4G接続率が最も高い上に、料金は最安クラスであるという、ユーザーにとってこの上ない利用環境であることが読み取れる。
■ 日本の携帯電話ユーザーの料金満足度は48.0%。前回調査と比べて改善。
前回調査と同様に、日本の携帯電話ユーザーに対して、「サービスエリア満足度」、「通信速度満足度」、「料金満足度」について、5段階評価で声を聞いた。
「サービスエリア」については、「満足している」(31.1%)、「どちらかと言えば満足」(34.7%)と、ポジティブな回答をしたユーザーは、全体の65.8%であった。「通信速度」については、「満足している」(24.7%)、「どちらかと言えば満足」(36.3%)と、ポジティブな回答の合計は61.0%。一方で、「料金」については、「満足している」 (19.9%)、「どちらかと言えば満足」(28.1%)というポジティブな回答が、合計48.0%となった。
「サービスエリア」と「通信速度」の満足度については、前回調査の結果と同程度であるが、「料金」の満足度については、前回調査ではポジティブな回答は38.1%であり、約10ポイント改善したことになる。
日本のユーザーの「料金」満足度は前回調査と比較して確実に改善しているが、それでも6カ国中最安クラスの料金と最高水準の品質という実態の割には、依然として低い水準にあるという見方もできる。
通信料金と通信品質が諸外国と比べて優れた水準にあることを示したが、たとえばサポート体制などの面を見ても、日本のユーザーの環境は充実していると言えそうだ。各国携帯電話事業者のホームページから当社がカウントした各国MNOの「キャリアショップ」の数の合計は、日本が人口10万人あたり7.1店で6カ国中最多。次点のアメリカが3.8店なので、日本の「リアル店舗」におけるサポート環境は充実していると言えよう。また、キャリアショップは「週1回休み」が標準的である国も多いが、日本のキャリアショップは「月1回休み」という店舗が最も多い。
ここ1年ほどで日本の通信料金水準が下がったのは、政府の意向による面が大きかったことは否めないが、通信品質は前回調査の時点でも上位水準にあり、その高い品質を維持できていると見ることができる。今後も日本の携帯電話事業者には、5G、6Gでも優れた通信品質の提供を期待したい。
ICT総研では、ユーザーにとって指標となる調査を今後とも実施していく方針である。
【本資料の調査結果・推計データについて】
* この調査は、調査対象6カ国の2021年12月1日時点の携帯電話料金(基本料金+データ定額料金。音声通話料金や定額通話サービス料金は含まない。契約に伴って自動的に適用等される割引がある場合は割引適用後のもの)のデスク調査に加え、日本のインターネットユーザーへのWebアンケート調査、各種公開資料をまとめて分析したものである。
* 調査対象事業者(ブランド)は、NTTドコモ(日)、KDDI(日)、ソフトバンク(日)、楽天モバイル(日)、Verizon(米)、AT&T(米)、T-mobile(米)、O2 (Telefonica UK)(英)、EE (BT Group)(英)、Vodafone UK(英)、Tree(英)、Orange(仏)、Sosh (Orange)(仏)、SFR(仏)、RED (SFR)(仏)、Free mobile(仏)、Bouygues Telecom(仏)、Telefonica Deutschland Holding(独)、Telefonica Deutschland Holding Blau(独)、Vodafone(独)、Otelo (Vodafone)(独)、Telekom Deutschland(独)、Congstar (Telekom)、SK Telecom(韓)、KT(韓)、LG Uplus(韓)。
* 携帯電話料金は、各国の調査対象事業者の月額平均料金である。一定期間を対象とする割引がある場合には、24ヶ月に平準化した。なお、金額は「税込」を「購買力平価換算」で円通貨に換算した。
(出典:OECD.stat, PPPs and exchange rates, PPP for GDP 2020 アメリカ 103.6円、イギリス 148.1円、フランス 139.9円、ドイツ 139.5円、韓国 0.12円)
* 本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、アンケート調査、各種文献等を元に当社アナリストが記述・推計したものであり、当該企業や公的機関等の公表値と異なる場合がある。
* 本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、資料公開時点のものである。(料金は2021年12月1日時点)。なお、引用した株式会社Agoopの資料は、2020年7月~12月のデータである。
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