NICT、全国規模の電波強度データをGIS形式で公開
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は2025年10月30日、全国主要都市における電波の強さ(電界強度)の測定データをウェブサイトで公開した。公的研究機関が中立的な立場から実施した全国規模の電波測定は国内初の取り組みとなる。
NICTは総務省の委託を受け、2019年から「電波ばく露レベルモニタリングデータの取得・蓄積・活用」研究として、生活環境における電波の強さを長期的に測定してきた。その一環として、2021年度から電測車を用いた広域測定を開始し、これまでに延べ40,000kmを超える距離を走行して測定を実施した。これは地球一周分に相当する距離だ。
測定対象は、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の6大都市圏(半径約40km圏内)と、新潟市、金沢市、岡山市、広島市、熊本市、松山市、徳島市、浜松市、静岡市(半径約25km圏内)およびその周辺地域となる。
公開されたデータは地理情報システム(GIS)形式の地図として提供され、携帯電話基地局や放送送信所などから届く電波の強さを1km四方の「基準地域メッシュ」ごとに8段階で色分け表示している。利用者は関心のある地点をクリックすることで、その場所の電界強度の数値や、電波防護指針で定める値に対する割合を確認できる。

電界強度マップ
電測車には屋根のレドーム内に3軸等方性電界プローブを設置し、約5秒間隔で測定を実施した。測定中の平均時速は約20kmで、停止中は自動的に測定も停止する仕組みだ。各メッシュの電界強度は、走行中に取得した測定データをメッシュ内で平均した値として表示される。
NICTはこれまでにも測定結果の一部を公表しており、2021年12月には生活環境における携帯電話基地局等の電波強度を、2024年7月には5G携帯電話基地局からの電波強度を明らかにしている。
今回の全国規模でのデータ公開により、より広範囲での電波環境の実態把握が可能となった。GIS形式でのデータ提供により、建物やインフラの情報、各種統計データの空間情報と組み合わせた活用も可能だ。
NICTは今後、測定地域をさらに拡大するとともに、同じ地域を複数回測定することで年度ごとの変化を明らかにしていく予定だ。また、海外での測定事例も踏まえながら、国際的にも活用できるデータとして発信していけるよう、電波ばく露レベルのモニタリング研究を継続・発展させていく方針を示している。
NICTリリース:日本全国主要都市の電波の強さを明らかに
https://www.nict.go.jp/press/2025/10/30-1.html
https://denpanews.jp/
