【業界トピックス】ドコモら3社、C2PAで偽情報を85%超検知。報道・防災分野で実証

ドコモら3社、C2PAで偽情報を85%超検知。報道・防災分野で実証

 NTTドコモビジネス株式会社、株式会社NTTドコモ、株式会社Specteeの3社は2026年3月16日、デジタルコンテンツの来歴や真正性を証明する国際技術標準C2PAを活用した偽・誤情報対策の実証実験結果を発表した。ファクトチェック業務にかかる時間の15%以上の短縮と、精巧に改ざんされたコンテンツの85%超を正確に識別できることを確認した。

AIが生む本物そっくりの偽情報。なぜ今、来歴証明が急務なのか

 C2PAとは、画像・動画などのデジタルコンテンツに「いつ・どこで・どのデバイスで」撮影・生成されたかを記録したデータを埋め込み、その情報が改ざんされていないことを検証できるようにする国際標準規格および団体の総称だ。Adobe、Microsoft、Intelなどが中心となって策定を主導している。埋め込まれたデータはデジタル署名によって保護され、コンテンツが誰の手を経て現在の状態に至ったかを追跡することが可能になる。

生成AIの普及により、一見して本物と区別のつかない偽動画や偽画像が大量に流通するリスクが急速に高まっている。選挙や大規模災害の発生時には、こうした偽・誤情報が社会的混乱を招く可能性があり、報道機関や防災情報を扱う企業にとって迅速かつ正確な情報の裏取り作業は長年の課題だった。従来の手作業による撮影場所・時刻の特定には多大な時間とコストを要し、速報性との両立が困難だった。

精巧な加工コンテンツに対し85%以上の識別精度を達成

今回の実証は、総務省が実施する「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業」の一環として行われた。テレビ朝日が報道現場の実務知見を提供するかたちで協力。

実証では3つの技術が開発・活用された。GPSだけに依存せず複数の情報源を組み合わせて撮影場所・時刻・デバイスの真正性を確認する「メタデータ真正性チェック技術」、検証済みのメタデータをC2PA準拠のデジタル署名形式でコンテンツに付与しコンテンツの来歴を追跡可能にする「署名付与技術」、そして担当者が視覚的・効率的に確認できる「真正性検証ツール」だ。

検証シナリオは2つ。1つ目は疑似的な選挙演説を想定したシナリオで、真正素材とAI等で改変された素材を混在させて真偽を検証。2つ目は土砂崩れなどの自然災害を想定し、SNS流通を想定した情報確認フローの有効性を確かめた。
選挙演説シナリオでは、目視では判別が困難な精巧な加工・改ざんが施されたコンテンツについても、真正性検証ツールを用いることで85%を超える割合で正確に識別できることが確認された。災害シナリオでは、コンテンツに付与されたメタデータの真正性が可視化されたことで、撮影場所や撮影時刻に関する裏取り調査にかかる時間が従来比で15%以上短縮。限られた時間での情報発信が求められる災害対応において、速報性と正確性を両立できる可能性が示された。

スマホで偽情報を即見抜く時代へ。保険・個人間取引にも広がる次の一手

 C2PA技術の実証は国際的にも進展している。欧州放送連合(EBU)の「News Pilot」では、ニュース画像に来歴情報を付与し、記者や視聴者が出所や編集履歴を検証できる仕組みが実装されている。
2020年にBBC、ニューヨーク・タイムズらが発足させたProject Originは、ニュースの信頼性を担保する来歴技術の先駆けとなり、現在のC2PA規格の基盤を築いた。現在はその運用実務が国際的な標準化団体IPTCに移管され、報道機関向けの検証済み発行者証明書の実装など、より実戦的なフェーズに移行している。
また、台湾のブロックチェーン企業Numbers Protocolは、Stanford大学とUSCが共同設立した研究ラボStarling Labや台湾の報道機関と連携し、2024年台湾総統選挙の報道向けにC2PAとブロックチェーンを組み合わせて選挙関連メディアの真正性を検証するプロジェクトを主導した(※1)。

政策面でも動きが加速している。EUではデジタルサービス法(DSA)の下で大手SNSプラットフォームに有害・欺瞞的コンテンツへの対応義務が課されているが、偽情報を用いた選挙介入事案は後を絶たない。欧州議会調査局は2024年12月、ルーマニアが外国勢力によるSNS上の情報操作を理由に選挙結果を無効とした事例を踏まえ、偽・誤情報と選挙の完全性に関するリスク整理を行うブリーフを公表した(※2)。


 3社は今後、開発した技術のスマートフォンへの搭載や、報道・メディア業界向けのツール提供を通じた社会実装を検討するとしている。適用分野も報道・防災にとどまらず、保険や個人間取引など情報の信頼性が特に重要となる幅広い領域への展開を見据える。

AIによるコンテンツ生成が一般化する中、「その情報はいつ誰が作ったのか」を証明する来歴技術の重要性は高まる一方だ。今回の実証がスマートフォンやSNSプラットフォームと統合される段階まで進めば、一般ユーザーがコンテンツの真偽を日常的に確認できる環境が整う可能性がある。ただし、C2PAの来歴情報が付与されていないコンテンツをどう扱うかという課題や、プラットフォーム側の対応状況については、引き続き社会全体での議論が必要となるだろう。

NTTドコモビジネス:リリース

Numbers Protocolによる台湾総統選挙向けC2PA+ブロックチェーン実証の詳細は同社の公開記事を参照。
欧州議会調査局(EPRS)ブリーフ「Mis- and disinformation on social media and related risks to election integrity」(2024年12月)を参照。

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