生活者のAI利用は効率化中心、課金意向は3%台
2026年3月27日、株式会社NTTデータ経営研究所とNTTドコモビジネスX株式会社は、全国の20~60代1,042人を対象にした「生活者がAIサービスに求める価値に関する調査」の調査結果を発表した。AIサービスは一定の普及が進みつつあるものの、生活者が感じる価値は時間短縮などの「負担軽減」に偏り、楽しさや満足感といった付加価値の創出には十分に至っていない状況が示された。加えて、課金継続意向は最大でも3.3%にとどまり、収益化の難しさも浮き彫りとなった。
調査では、サービス利用時に感じる価値を「負担の軽減」と「付加価値の提供」に分類して分析している。その結果、AIサービスでは73.5%が「負担の軽減」に価値を見出しており、「付加価値の提供」は26.5%にとどまった。一方で、SNSや動画配信などのデジタルサービスでは「付加価値の提供」が41.2%に達しており、単なる効率性にとどまらない体験価値の提供が進んでいる実態が確認された。
この差は、生活者が本来求めている価値とのギャップとしても表れている。時間や費用に余裕がある場合の消費意向をみると、「体験・娯楽」「モノの購入」「健康」といった領域では、「安心」「感動」「高揚感」などの感情的価値が最も重視される傾向が見られた。すなわち、生活者は効率性だけでなく、体験の質そのものに価値を見出しており、この点でAIサービスは十分に応えきれていない。
利用意向は検討段階に集中、体験価値が課金のネックに
こうした状況は利用意向の段階別にも反映されている。AIサービスの利用意向は「検討・計画段階」で53.0%と最も高く、情報収集や意思決定支援といった用途では一定のニーズが確認された。一方で、体験時や体験後になると利用意向は拮抗または低下し、継続的な体験価値の提供には課題が残る構造となっている。
課金意向においても、AIサービスへの支払い意欲は全体として低水準にとどまる。AIサービス利用者を対象に現在の課金状況と、今後の課金必須化・値上げを想定した継続意向では、「課金しており、今後値上がりしても金額次第で利用を続ける」と回答した割合は、「レストランでの接客」で3.3%、「テキスト作成」で2.7%が最上位で、他のサービスはそれを下回った。
価値観別に分析しても、すべての項目で「今後課金が必須になったら利用をやめる」層が多数を占め、「時間の無駄を解消してくれる・スピード感がある」に至っては34.3%がこの層に該当した。「課金しており、今後値上がりしても利用を続ける」と回答した割合はどの価値観でも0.5%以下にとどまり、AIサービス全般にわたって支払い意欲が根付いていない実態が示された。音楽配信(16.0%)や動画配信(14.8%)など付加価値型のデジタルサービスと比較すると、その差は歴然としている。

企業によるAI投資は拡大を続けているが、現状は業務効率化など提供者視点の活用が中心となっている。今後は、生活者の利用文脈や価値観に基づいた設計が求められているのかもしれない。特に、信頼性の確保を前提としながら、感情的価値をどの段階で提供できるかが、AIサービスの定着と収益化を左右する要素となるだろう。
参考:NTTデータ経営研究所/NTTドコモビジネスX「生活者がAIサービスに求める価値に関する調査」
https://denpanews.jp/
