KDDI 「防災マップボード」開始 AIと地図で災害対応を強化
KDDIは2025年10月から自治体の防災力向上を目的とした新サービス「防災マップボード」の商用提供を開始したと発表した。本サービスは、南海トラフ巨大地震をはじめとする大規模災害時における自治体の情報集約・意思決定を支援するもので、AIや独自技術を活用して多様な防災情報を一元的に管理できる仕組みを備えている。地図上にリアルタイムの気象データやライブカメラ映像、避難所や病院の位置情報などを重ねて表示でき、災害対応時の迅速な判断や避難誘導の最適化を支援する構成となっている。

このサービスの最大の特徴は、JX通信社のAIリスク情報収集サービス「FASTALERT(ファストアラート)」との連携機能にあるようだ。「FASTALERT」は、SNSやニュースアプリ「NewsDigest」から事件・事故・災害など80種類以上のリスク情報を収集し、AIと専門スタッフが信頼性を確認した上で発生場所を特定する仕組みを持つ。この連携により、自治体職員が現場へすぐに駆けつけられない場合でも、SNS上の投稿から災害の発生状況や住民の被災状況をリアルタイムで把握できるようになると言える。また、現場で活動する職員がコメントや画像を地図上に付箋形式で貼り付けられる機能も搭載されており、情報の共有や伝達を迅速化できる設計となっている。この仕組みは、従来のように電話やメールを介して情報を伝達していた際に発生していた遅れや漏れを防ぐ効果があるようだ。
さらに、「防災マップボード」にはKDDIが特許を取得しているハイパーレイヤリング技術が活用されている。多数の情報を同時に重ねても遅延が起きにくい構造となっており、一般的なパソコンとWebブラウザで利用できるため、専用機器の導入は不要だ。初期費用もかからず、2IDまで無料で利用可能な料金設計となっている点も導入しやすい特徴だと言える。「FASTALERT」連携を利用する場合は追加料金が発生するが、自治体の災害対応力強化に直結するシステムとして有用性は高いと考えられる。
KDDIはこれまでも通信インフラやICTの知見を活かして防災分野でのDX推進に取り組んできたが、今回の商用化はその延長線上にあるようだ。2024年夏以降には全国140自治体で試験導入を実施し、現場の職員からの意見を反映して改良を重ねてきたという。今後は、ハザードマップや避難者情報、備蓄品のデータなどを柔軟に統合し、自治体ごとの災害特性に合わせた最適な情報可視化を支援していく方針だ。
KDDIは、「通信」と「地域共創」を軸に、災害対応の高度化と住民の安全確保を両立する仕組みづくりを進めている。今回の「防災マップボード」は、同社が掲げる「KDDI VISION 2030」の実現にもつながる取り組みであり、地方自治体の防災DXを推進する重要な一歩だと言える。今後、AIや通信技術を活かした地域支援がどこまで発展するのか、注目が集まるようだ。
参考URL:https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-760_4137.html
https://denpanews.jp/