2012年度上期 次世代高速データ通信 通信速度実測調査

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■ 「SoftBank 4G」が昼夜とも下り平均10Mbps超、首都圏では18Mbpsと他を圧倒
■ 「EMOBILE LTE」は上り平均 昼7Mbps、夜5Mbpsと、他を抑えトップの値を記録
■ 「UQ WiMAX」は、4地点で10Mbps超が見られたものの、下り平均は5.5Mbps
■ 「Xi」は、昼は比較的安定しつつも、下り平均4.4Mbpsであった

 株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は8月28日、2012年度上期 次世代高速データ通信の通信速度実測調査の結果をまとめた。
 NTTドコモの「Xi」(クロッシィ)が500万契約、UQコミュニケーションズ(KDDIのグループ会社)の「UQ WiMAX」も300万契約をそれぞれ突破、ソフトバンクモバイルの「SoftBank 4G」はサービスエリアを拡大、イー・アクセスは「EMOBILE LTE」を3月に開始するなど、モバイル利用での高速データ通信がいよいよ身近な存在になってきている。
 これを踏まえ、通信速度の実測調査を実施した。「次世代高速データ通信」と銘打っていることから、現時点で理論上の最大速度が下り40Mbps前後以上のサービスを調査対象とした。測定地点は東名阪27地点。データ通信のサービスは、ノートパソコンなどのデジタルデバイスでの利用が中心になると考えられるため、本調査では、各社のデータ通信端末とノートパソコンを接続して通信速度を調べる形式とした。また本調査は、当社で2012年2月に実施した「次世代高速データ通信 電波状況実測調査」の続編としても位置付けているが、測定手法が若干異なるため、単純比較はできない。
 各社のデータ通信速度を実測した結果、2012年2月に実施した調査と比較して、全体的に通信速度は大きく向上した。この要因として、各社の日々のネットワーク品質強化への取り組みの成果、「EMOBILE LTE」など新サービスの開始が挙げられ、測定方法の差異も影響している。(前回調査では各測定地点の鉄道駅において「ホーム」、「改札内」、「改札外」の3箇所の平均とした一方で、今回は「ホーム」のみとした。)

■ 「SoftBank 4G」が昼夜とも下り平均10Mbps超、首都圏では18Mbps超と、他を圧倒

 通信事業者別に見ると、下り通信速度では、「SoftBank 4G」の速さが際立つ。東名阪27地点の下り平均速度は、昼15.28Mbps、夜11.12Mbpsと、ともに次点の「EMOBILE LTE」(昼9.90Mbps、夜7.95Mbps)を引き離している。サービス開始から半年あまりと、「Xi」や「UQ WiMAX」に比べると利用者数が少ないことで回線が逼迫していないことも影響しているはずだが、今回調査対象サービス中トップの最大速度下り76Mbps(理論上)の看板通りの速度差を見せている。名阪と比べると特に首都圏に強く、首都圏での下り平均速度は18.22Mbpsと驚異的だ。他社サービスに比べて同じ地点でも通信速度にムラがあるのが欠点だが、今後はエリアの拡大とともに改善を期待したい。

■ 「EMOBILE LTE」は上り平均 昼7Mbpps、夜5Mbpsと、他を抑えトップの値を記録

 上り通信速度では、「EMOBILE LTE」が昼7.01Mbps、夜5.22Mbpsでトップの値を記録した(次点は「SoftBank 4G」で、昼4.62Mbps、夜3.70Mbps)。前回調査時は昼0.91Mbps、夜0.61Mbpsであり、3月に開始した新サービス「EMOBILE LTE」によって、大きく改善していることが分かる。理論値で上り最大速度が25Mbpsと、そもそも他社を大きく上回っており、その差を実証した形だ。ソーシャルネットワークの普及が著しい昨今では、上りの通信速度も重要になってきており、この速度ならばより快適に利用できるだろう。また、下り通信速度でも、東名阪27地点全体で9.90Mbps、首都圏だけなら10.70Mbpsと、特に都市部で強みを見せた。ただし、現時点では、同一地点でも測定のたびに速度差が見られる。この点は、今後改善を要望したい。

■ 「UQ WiMAX」は、4地点で10Mbps超が見られたものの、下り平均は5.5Mbps

 「UQ WiMAX」は、下り平均速度が昼5.51Mbps、夜3.87Mbpsを記録。27地点のうち4地点では10Mbpsを超えた。「SoftBank 4G」や「EMOBILE LTE」には差をつけられたものの、実用十分な通信速度であると言える。「Xi」と比較すると昼と夜の速度差が小さい点が強みとなっており、混雑する夜でもある程度安定した速度で通信できている。一方で、建物内部などで電波が弱い傾向は変わっておらず、この点は改善を期待したい。

■ 「Xi」は、昼は比較的安定しつつも、下り平均4.4Mbpsであった

 NTTドコモの「Xi」は、下り平均で4.43Mbpsとなった。昼は地点ごとに安定していたものの、夜の混雑時は速度が低下し、1.91Mbpsにとどまった。特に品川、新宿、池袋など、山手線内主要ターミナル駅での夜の通信速度で苦戦した。データ通信端末だけでなく、音声端末でも「Xi」サービスを提供していることで今回調査対象の中で群を抜く契約数を保有しているが、このことが通信速度が出づらい要因と見られる。カバーエリア自体は他社と比較しても広いため、回線の逼迫状況の解消が求められる。

■ 今後、100Mbps以上の次世代通信規格が次々と登場

 後は各通信事業者から、さらに高速なサービスが登場する予定だ。
 NTTドコモの「Xi」は、今回の測定地点を含む多くのエリアで下り最大37.5Mbpsだが、羽田空港など一部エリアではすでに75Mbpsを実現しており、2012年冬モデルでは、最大112.5Mbpsに対応した端末を投入する方針だ。
 「UQ WiMAX」は、現時点で下り最大40Mbpsだが、UQコミュニケーションズでは2013年度を目途に「WiMAX2」を準備中。下り150Mbps以上を目標に据えている。また、auとしても、「4G LTE」のサービスを、当初計画していた12月よりも前倒して開始する計画だ。
 ソフトバンクモバイルは、今回調査対象とした「SoftBank 4G」が現時点で下り最大76Mbps。だが、同サービス自体のスペック上の最大値は全域110Mbpsであり、これに対応した端末の投入も予定されている。同社では、これ以外にも、FDD-LTEという別規格のLTEサービスを2012年秋以降に開始する計画を持っており、複数の高速データ通信回線を持つことになる。
 イー・アクセスの「EMOBILE LTE」は3月15日よりスタート。下り最大75Mbpsと、「SoftBank 4G」と並んで現時点では最も高速なデータ通信回線に位置づけられる。現時点では実際に最大75Mbpsで通信できるエリアは限られるが、同社ではエリアを順次拡大する計画を示している。今後は、快適に通信できるエリアのさらなる拡大に期待したい。

 通信事業者ごとに強弱はあるものの、上記に示したとおり、各社はそれぞれモバイルデータ通信の環境改善に力を注いでいる。これにより、ユーザーはますます場所を選ばずに、デジタルデバイスでネット利用が可能になってきている。今後数年内に各社がターゲットとする理論上の速度も、「100Mbps以上」が基準になっていきそうだ。
この調査では、測定地点を東名阪27地点の鉄道駅ホームとしたが、当然のことながら、ユーザーが利用する場所は駅ホームだけではない。通信事業者には、ユーザーが利用するさまざまな環境下で、快適な通信環境を整えてもらうことを今後さらに期待したい。

*本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、調査実施時点の実測データである。


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