【業界トピックス】東京メトロとシャープ、北千住駅で床面投影による混雑緩和実証へ

東京メトロとシャープ、北千住駅で床面投影による混雑緩和実証へ

 東京地下鉄株式会社は2026年9月3日に、シャープ株式会社および株式会社レスターと協働し、東京メトロ千代田線北千住駅の構内において、列車の混雑状況に応じた案内情報を床面に投影する実証実験を2026年9月9日から開始すると発表した。多くの乗客が行き交う主要ターミナル駅である北千住駅では、特定の号車や出入口付近に乗客が集中することによるホーム上の混雑や乗降時間の延伸が慢性的な課題となっていた。こうした状況を解消し、駅利用者の安全性と利便性を高める混雑平準化を目的として、今回の先進的な取り組みが計画された。同駅ではすでに2024年12月から、駅コンコースに設置されたデジタルディスプレイを活用し、「列車混雑計測システム」によってリアルタイムに算出した号車ごとの混雑度を表示する情報提供を行ってきた経緯がある。しかし、歩行中の乗客が立ち止まることなく、直感的に状況を把握して自発的に空いている車両へと移動できるようにするためには、従来の頭上や壁面の案内板だけでなく、より視線に入りやすい新たな案内手法の導入が求められていた。そこで今回、地下鉄の運行管理で得られるリアルタイムデータと最新鋭の映像投影ソリューションを融合させ、駅コンコースの床面を活用した動的な人流誘導の実効性を検証する運びとなった。

 この実証実験では、シャープが開発を進めるプロジェクション技術コンセプト「Omject(オムジェクト)」を活用した人流制御システムが中核を担っている。Omjectは、さまざまな構造物や床面などの空間に直接案内映像を投光することで、人々の自然な行動変容を促す先進ソリューションだ。北千住駅のコンコース床面に対し、東京メトロの列車混雑計測システムから連携される号車ごとのリアルタイム混雑率データに連動したグラフィックや矢印が投影される。具体的には、比較的空いている号車へ向かう通路には「そのまま直進」といった進行を促すメッセージが表示される一方、混雑している号車方面には「現在混雑中」といった注意喚起の案内がタイムリーに映し出される設計となっている。参画する3社の役割分担も明確に定められており、東京メトロは列車の運行状況や混雑率を踏まえた最適な誘導動線の検討、混雑率データの提供、人流制御システムとの連携機能開発、および実験場所の提供を担当する。シャープはOmjectを核とした人流制御システムの構築と視認性に優れた表示コンテンツの制作を手掛け、レスターは列車混雑計測システムなどに用いられる専門的なハードウェアや機器類の調達・供給を担当している。

 検証のプロセスは、事前調査を含めて2026年9月9日から数カ月間にわたって段階的に実施される予定だ。まず事前調査期間においては、床面への映像投影を行わない通常の状態において、駅コンコースの通路分岐点に設置されたカメラを通じて利用者の自然な歩行の流れを分析する。通路を通過する人数を画像解析技術によって高精度にカウントし、それぞれの方向にどの程度の割合で乗客が進んでいるかを定量的に把握して基準データを取得する。その後の本実証段階では、実際に床面への案内投影を作動させた上で、歩行者の進路選択や人流パターンにどのような変化が生じるかを同一の人数カウント技術を用いて比較検証していく。さらに、案内の投影タイミングや表示間隔を変化させることで、乗客の心理や行動にどのような差異が生じるかについても多角的に検証が行われる計画だ。なお、駅利用者のプライバシー保護には厳格な対策が講じられており、カメラで撮影された映像は現地端末内で即座に数値データへと変換され、録画データとして保存されたり外部ネットワークへ送信されたりすることはない。また、歩行時の安全確保やプロジェクター光の直視防止など、駅利用者が安心して通行できる環境づくりにも万全の配慮がなされている。

 鉄道インフラにおけるデジタルトランスフォーメーションが加速する中、今回の取り組みは未活用であった駅構内の床面を動的な情報発信メディアとして再定義する革新的な試みと言える。スマートフォンなどを操作しながら歩行する乗客が増加する現代において、視線の下方に直感的なガイダンスを提示するアプローチは、安全な歩行環境の維持と円滑な駅動線の形成に大きく寄与するものと期待されている。この実証実験は、最先端のプロジェクション技術とリアルタイム運行データを融合させることで、駅構内の混雑緩和と乗客の快適な移動体験の創出を力強く後押しするものとなる。

参考URL:https://www.tokyometro.jp/news/2026/225181.html

https://denpanews.jp/

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